「小商いのすすめ」平川克美

平易な言葉で、ヒューマン・スケールの大切さ、拡大ではなく縮小均衡、自分が「いま・ここ」にいる偶然を必然に変えられるように責任を引き受けること、「大人」になることの必要性を読者に語りかける。震災以降、もう一度立ち止まって考える時に来ていることを告げる本だ。以下、引用メモです。


ヒューマン・スケールの復興。テクノロジーの進化は、生物として人間が持つ自然の力を飛躍的に増大させた。

成長とは、本来「生まれた時は平等」だったはずの人間が、個としての自分を確立していく過程で、お金持ちになったり、貧困に生きなくてはならなかったり、才能を開花させて名をなしたり、平凡な暮らしの中に幸福を発見したりというように、個々がばらけて行くプロセスでもある。

墓場までのプロセスとは、まさにばらけた個々がもう一度「死」という絶対的平等へと降りていくプロセスである。

文明の進展は、時間を短縮させ、「余暇」を出現させた。生きることが働くことだった時代から、金のために働くようになった。消費と欲望の拡大再生産。欲望を満たすために働く。

進歩とか発展という観念は貧乏な状態の中にしかない。成長によって野性が失われた。

「出生率の低下は将来に対する不安」からではない。

高度経済成長は、貧困という問題を解決できた。日本は貧乏だったから成長できた。富を蓄えた成熟国家である現代の日本。「個」の発見とともに、地縁、血縁、家族、国家といったものと激しく衝突し、それが歴史を動かす動力となった。戦後の日本とは「家族」的なものが「個」へと解体していく歴史。個人も会社も、互助的な共同意識が薄れて、自己決定、自己責任という価値観が支配的になった。それは民主主義の必然であり、私たちがのぞんだ結果。グローバルな弱肉強食の世界を生き抜く個人倫理。資本主義とはそもそも経済成長を前提にしたシステムであり、その最も成熟した西欧型先進国家において、総需要が減退し、経済成長がもはや出来ない状態に。

小商いとは「いま・ここ」にある自分に関して、責任を持つ生き方。自分が「いま・ここ」にいる偶然を必然に変えること。リターンを期待しない贈与ができる「おとな」になること。母親が子供に与える愛情とは、見返りの期待しない一方的な贈与。

人口減少とともに縮小均衡に向かう経済。小商いとは、自分が売りたい商品を、売りたい人に届けたいという送り手と受け手を直接的につないでいけるビジネスという名の交通であり、この直接性とは無縁の株主や、巨大な流通システムの影響を最小化するやり方。送り手と受け手の関係が長期にわたって継続していくことで、送り手は自分が行っていることが意味のあることであり、社会に必要とされているのだと実感すること。

人間は誰でも自然の摂理のなかから偶然にこの世の中に生まれ落ち、数十年を経て再び自然の摂理のなかに回収されていく存在です。ヒューマン・スケールとは、まさに人間がどこまでいっても自然性という限界を超えることが出来ない存在であり、その限界には意味があるのだということから導きだした言葉です。

人間とは本来、小商い的存在だからです。

(こ)
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2011年映画ベスト10
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2009年映画ベスト10
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