「メランコリア」ラース・フォン・トリアー

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豪華キャストである。だがラース・フォン・トリアーである。これまでさまざまな度肝を抜く映画を観させられてきただけに警戒して観た。とろこが拍子抜け。なんだ?この毒気の無さは? 「アンチクライスト」は見逃したのだが、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」から始まり、「奇跡の海」「ドッグヴィル」「マンダレイ」と、これでもかという不幸を登場人物たちに見舞わせ、観客をいつも奈落の底に沈めるかのようにグッタリとさせ、人間とは何か?生きる意味とは?と重く問いかけられ続けた映画群に比べると、なんともあっ気ない。

冒頭、いかにも幻想的な映像が映し出される。迫りくる惑星、灰色のツタに絡まる女性、堕ちてくる鳥たち、庭園に立ち並ぶ木の二つの影。二つの月。スローとCGで加工された美しき幻想的な映像に、いきなりゲンナリさせられる。僕は『ツリー・オブ・ライフ』もダメだったのだけど、こういう映像は好きじゃない。いかにもアート的に作られた感じが薄っぺらい。ちっともドキリとしない。

さて第一部のジャスティンはまだ面白い。キルスティン・ダンストが不安定な花嫁を見事に演じている。金を使った贅沢な披露宴、2時間も遅れて悠々と到着する新郎と新婦。披露宴途中で、動けなくなって風呂に入ったり、放尿シーンや野外セックスまである常軌を逸した行動。苛立ちや不安、新郎(アレクサンダー・スカルスガルド)との関係や広告代理店の仕事のことなど、大騒ぎの披露宴の中で描いていて、その不安定な人間描写には見応えがあります。母親役のシャーロット・ランプリングが怖いですね~。結婚や家族を否定するような人を寄せ付けない冷たさは、この人に叶う人はいません。父親役のジョン・ハートもいい味を出しています。そういう意味で、いろんな役者たちを楽しむにはいい映画です。

あと、ジャティンの気持ちを表したような手持ちカメラの振り回すようなパンには、少々疲れました。不安定な心理を描きたいのはわかるけれど・・・。二部では全くそのような手持ちカメラは使われていませんでしたから、かなり意図的なカメラワークだったのでしょう。馬を走らせる俯瞰ショットはだからとても効果的でした。

第二部のクレアはあまり面白くありません。惑星が地球に迫りくる危機の中で、クレア(シャルロット・ゲンズブール)と夫のジョン(キーファー・サザーランド )と息子レオの一家と精神的なダメージを受けたジャスティンが披露宴が行なわれた豪華な屋敷で過ごす物語。終末が近づく不安。メランコリアの惑星の明かりの下で、全裸で寝そべる美しいキルスティン・ダンストの姿態は拝めますが、シャルロット・ゲンズブールが恐怖で慌てふためく様を観てもそれほど面白くありません。

真面目で常識的な姉クレアとエキセントリックで奔放な妹のジャスティンのそれぞれの不安が、一部と二部で逆転されつつ対比されて描かれますが、それだけの映画です。残念ながら、いつものラース・フォン・トリアーのサディズム的極限映画にはとても感じられず、僕にはなんだか物足りない感じでした。

鬱病の果てに、ジャスティンのように不安を受け入れつつ、魂の救済を描いたような終末観。ラストは幸福感すら漂っていました。魔法の洞窟と呼ばれる木の枝で作られたテントのような囲いは、どこか滅んだ先住民族の儀式のようでもありました。


原題: Melancholia
製作国: 2011年デンマーク・スウェーデン・フランス・ドイツ・イタリア合作映画
配給: ブロードメディア・スタジオ
上映時間: 135分

監督: ラース・フォン・トリアー
脚本: ラース・フォン・トリアー
撮影: マヌエル・アルベルト・クラロ
キャスト: キルステン・ダンスト、シャルロット・ゲンズブール、アレクサンダー・スカルスガルド、ブラディ・コーベット、シャーロット・ランプリング、イェスパー・クリステンセン、ジョン・ハート、ステラン・スカルスガルド、ウド・キア、キーファー・サザーランド

☆☆☆3
(メ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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