「インセプション」クリストファー・ノーラン

インセプション

他人の夢である深層心理に侵入し、アイデアの段階で企業秘密を盗み出す企業スパイ。夢と現実の境界がよく分からなくなるような複雑な構成。その夢の世界は、集合的無意識のように、入り込んだ人々に共有され、創作できて、さらにいくつかの階層に分かれている。夢の夢がまた夢ということだ。そしてそれぞれの階層では、時間間隔が違うという話。説明するのも面倒くさい。

結局はアメリカ映画が大好きな家族愛がメインテーマとして描かれているのだが、夢の中で現実とも夢とも知れない戦いのサスペンスが展開される。本人の精神的抵抗らしいのだけれど、なんだか戦いの緊張感が生まれない。夢の中なので人を殺すことに痛みが伴わないのだ。「どうせ夢の中だ、派手にやっちまえ」みたいな感じで、敵をドカーンとやっつける。まるでゲームのようだ。脳内ゲーム。そう、これはゲーム的仮想現実が支配する世界観だ。あるルールの中で、敵を退治し、ターゲットの人物の秘密を盗み出すというサスペンスに、失われた愛と家族の物語が組み合わされている。それをCGを駆使した派手な仕掛けとアクションで展開する。恐れられているのは、夢の中で死ぬと<虚無Limbo>に陥るという恐怖だ。何度も繰返される夢の中の<死>は、現実感が伴わないため、リアルな痛みを失ってしまう。

レオナルド・ディカプリオの愛する妻がマリオン・コティヤール。夢に誘導するための音楽としてエディット・ピアフのシャンソン「水に流して(Ne, Je ne regrette rien)」が何度も繰返される。マリオン・コティヤールは、『エディット・ピアフ 愛の讚歌』でピアフを演じ、この映画の中でも同じ曲が使われている。夢を他者が共有するということは、まさに映画そのものであり、同じ曲を使うというのもそういった夢の共有の一つの仕掛けなのか。

現実のリアルが本当にリアルなのか?死も幻想として身体性を失っていく・・・この仮想現実がはびこる現代的なテーマでありながら、大袈裟な仕掛けと複雑な夢物語ばかりが強調され、痛みが心に響いてこない。この身体性の痛みが響かないことこそを描いたのかもしれないが、仕掛け倒れのゲームのような大袈裟で空疎な夢オチ?映画である。


原題: Inception
製作国: 2010年アメリカ映画
配給: ワーナー・ブラザース映画
監督・脚本: クリストファー・ノーラン
製作: エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン
製作総指揮: クリス・ブリガム
撮影: ウォーリー・フィスター
美術: ガイ・ヘンドリックス・ディアス
編集: リー・スミス
音楽: ハンス・ジマー
キャスト: レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、ジョセフ・ゴードン=レビット、マリオン・コティヤール、エレン・ペイジ、トム・ハーディ、ディリープ・ラオ、キリアン・マーフィ、トム・ベレンジャー、マイケル・ケイン、ピート・ポスルスウェイト、ルーカス・ハース

☆☆☆3
(イ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : サスペンス

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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