「しとやかな獣」川島雄三

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まったくもって珍作、怪作。『幕末太陽傳』の川島雄三が、こんなヘンテコで珍妙なる怪作を作っていたとは知らなかった。ネットで調べると、ケラリーノ・サンドロヴィッチほか、何人かの演劇人が舞台化しているらしい。うん、わかるわかる。これはある種のブラックコメディ演劇&映画である。ケラが傑作だと飛びつくのがよくわかる。そう、これは悪人しか登場しない欲望にまみれた悪意に満ちた人間喜劇だからだ。

舞台はすべて団地の一室で繰り広げられる。伊藤雄之助、山岡久乃夫婦は、部屋の模様替えをしている場面から始まる。金を持っていない貧相な部屋に見せかけるための詐術の準備である。この夫婦も息子も娘も、人から金を騙し取ることしか考えていない。そして、その上を行く悪女に若尾文子。タイトルになっているように、「しとやかな獣」だ。さらに若尾文子に騙された事務所社長や、娘を愛人にしている作家などなど、この団地に一室にさまざまな人物がやってきて、騙された怒りをぶつけ、男女の痴話げんかや愛の告白、金をめぐる言い争い、そして夫婦の文明批評などなど、まさに滑稽で欲望にまみれた人間模様が次々と繰り広げられるのだ。

それを様式的な演出で切り取ってみせる川島雄三。抽象的な造型のイメージの階段や部屋での狂乱。姉弟が踊り狂うバックとなる赤い夕空や夜の闇での夫婦のシルエット。アパートの覗き窓や真下や真上からなどの大胆なカメラワーク、能や狂言で使われるような音楽。もうシュールとしか言いようがない。

こういう怪作が撮られていた日本映画界の懐を深さに感服。そして、新藤兼人脚本の素晴らしさに敬意を表したい。


しとやかな獣(1962)
メディア 映画
上映時間 96分
製作国 日本
監督: 川島雄三
原作: 新藤兼人
脚本: 新藤兼人
撮影: 宗川信夫
美術: 柴田篤二
音楽: 池野成
出演: 若尾文子、川畑愛光、伊藤雄之助、山岡久乃、浜田ゆう子、山茶花究、小沢昭一、高松英郎、船越英二、ミヤコ蝶々

☆☆☆☆4
(シ)
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ジャンル : 映画

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