「まぼろし」フランソワ・オゾン

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フランソワ・オゾンの見逃していた映画『まぼろし』をやっと見た。とても静かないい映画だった。する夫の突然の失踪。蒸発なのか?事故なのか?自殺なのか?不明のまま海辺に取り残される妻、シャーロット・ランプリング。いなくなるのはやっぱり海辺なんだよなぁ。海は人をのみこむ。

失踪といえば、かつてミケランジェロ・アントニオーニの『情事』という映画があった。あれは無人島か何かで、一人の女性がいなくなるが、探していた二人の男女が関係を持って、いつしかいなくなった女性の存在は映画の中でも忘れ去られてしまう不思議な映画だった。失踪・蒸発というテーマは、なぜか惹かれる。日常から消えて別のものになりたい欲望、知っていた身近な存在が消えてしまい、見知らぬ存在であったことに愕然とする・・・など、人はいくら身近な存在でも、はかり知れない謎なのだ。

その謎が、そのまま放り出されて、映画は進行する。しかも、妻は夫の幻を見続ける。失踪などなかったかのように、部屋で会話を交わし、ベッドで一緒に寝る。そんなとき、別の男と関係を持つ。事情を知っている友達に男を紹介され、男も彼女に興味を持つのだ。しかし、その男と関係を持った途端に、警察から夫らしき水死体があがったという連絡が入る。そして、そばにいたはずの夫の幻は消えてしまうのだ。

夫がうつ病を患って薬を飲んでいた事実を知り、義母もそのことを承知しており、自分だけが知らなかった夫の一面。自殺だったかもしれない夫の失踪。し合っていると信じていたのは自分だけだったのか?知らない夫の姿が失踪後に突然、自分の前に立ち現れる。

新しい男とセックスしている時に、「あなたは軽いの」と言って突然笑い出す場面、夫の水死体を確認した後、遺品の腕時計を見て、笑い出しながら「これは夫のものではない」と言う場面など、秀逸だ。夫の失踪後をわざとらしい物語にしていなくて、ラストも曖昧なままにしているところが凄くいい。幻として登場する夫の出かたも、さりげなくていい。

突然の死は、日常にじわじわと侵食するものだ。それを大袈裟にではなく、静かに喪失の哀しみを描いているところが、フランソワ・オゾン監督の並々ならぬ才能だ。好きな映画だ。


原題:Sous le Sable
製作国:2001年,フランス,95分

監督フランソワ・オゾン
脚本フランソワ・オゾンエマニュエル・ベルンエイムマリナ・ドゥ・ヴァンマルシア・ロマーノ
撮影アントワーヌ・エベルレジャンヌ・ラポワリー
音楽フィリップ・ロンビ
出演シャーロット・ランプリングブリュノ・クレメールジャック・ノロアレクサンドラ・スチュワルトピエール・ヴェルニエアンドレ・タンジー

☆☆☆☆☆5
(マ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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