「ぼくのエリ 200歳の少女」

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『裏切りのサーカス』のトーマス・アルフレッドソン監督の話題になった作品『ぼくのエリ 200歳の少女』をやっと見る。美しくも哀しいバンパイアの少女との出会いを通して成長していく少年の物語だ。素晴らしい出来だ。これをハリウッドが『モーリス』としてリメイクしたそうだが、きっとこの映画には遠く及ばないであろう。それほどこの映画は美しい。

カメラがとらえた映像がとにかく素晴らしい。被写界深度の浅い画像で人物を切り取り、ピントを手前から奥へと送りながら、心の陰影を映し出す。そして雪の情景のロングショットの美しさ。その寄りと引きの画面のバランスがいいのだ。少女が初めて大人の男性を襲う場面や雪の森での父親の殺人場面のロングショットなど、どれも抑制の効いた画面で大袈裟に見せない。美しい雪の情景の中で、静かに惨劇を見せる。哀しみを優しく包み込むようにヒキの画面で描くのだ。大袈裟に恐怖を煽るような音楽や音がないのもいい。

窓に映る少年の裸。男になる前の中性的な少年の孤独。ルービックキューブでの二人の出会い、雪のジャングルジム。二人の出会いはいつも夜だ。学校で苛められる昼の現実と雪の夜の甘美な時間。父を失った悲しみのあとに、少年の小さな背中が見えるベッドに裸でもぐりこむ少女。少年の血を思わず吸ってしまい木の上に昇って闇を見つめる少女の孤独。裸足の彼女を訝しく思い病院から出てきた看護師と病院の壁を素早く駆け上がる彼女のワンカット、そして少女が顔から血を流す場面のせつない哀しさよ。こんな美しきせつない怪物がかつていただろうか。そしてラストのプールでの惨劇のロングと列車の場面。列車の窓からの風、カメラがパンをすると少年と大きな箱。そして、少年は箱にモールス信号でなにやら語りかける。

もともと大袈裟なお化け屋敷的なホラー映画は苦手であまり観ないのだが、これだけ抑制の効いた美しきホラー映画を僕は知らない。


ぼくのエリ 200歳の少女(2008)
LAT DEN RATTE KOMMA IN
LET THE RIGHT ONE IN
上映時間 115分
製作国 スウェーデン
監督: トーマス・アルフレッドソン
原作: ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト 『モールス』(ハヤカワ文庫刊)
脚本: ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
撮影: ホイテ・ヴァン・ホイテマ
美術: エヴァ・ノーレン
編集: トーマス・アルフレッドソン、ディノ・ヨンサーテル
音楽: ヨハン・セーデルクヴィスト
出演: カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション、ペール・ラグナー、ヘンリック・ダール、カーリン・バーグクィスト

☆☆☆☆☆5
(ホ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : ホラー ☆☆☆☆☆5

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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