「女優 須磨子の恋」溝口健二

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島村抱月と松井須磨子が溝口健二と田中絹代に重なる。

坪内逍遥が創設した文芸協会演劇研究所に入門していた松井須磨子(田中絹代)が、舞台監督の島村抱月(山村聡)に「女性の解放と自立」を描いた『人間の家』のノラ役に抜擢される。日本の新劇史に大いなる足跡を残した二人。松井須磨子は、ノラそのもののように夫と別れて自立し女優になり、島村との愛を守るために研究所も辞める。島村も二人の噂で騒がれ、坪内逍遥のもとを去る決意をし、地位も家族も捨てて二人は芸術座を旗揚げする。理想と現実の狭間で、資金集めのために厳しい地方巡業の旅公演をし続けているうちに島村は急死。そして、人気女優にまで昇りつめた松井須磨子も島村への思慕断ちがたく、後追い自殺する。日本の演劇史の夜明けの物語である。

溝口健二お得意のワンシーンワンカットをすでに多用。フェイドアウトしながら、ワンカットでエピソードを積み重ねていく。奥行きのある画面構成、役者を動かしながらカットを割らずに演劇的に時間を持続させて見せていく。しかし、テンポのいいカット割りのリズムに馴染んだ我々は、どうも見ていてまったりとしてくる。

それにしても田中絹代という女優は、近代の女性の自立を体現したわりには美しく見えない。都会的でなく田舎臭い。気が強く、芸術への強い志と女性の強さを演じているのだが、時代のせいか芝居が大げさで台詞回しもキンキンしていて魅力がない。『カルメン』ほか、ヨーロッパ演劇の派手な衣装を着て演じるのだが、似合わないのだ。ただの気の強いわがままな女優にしか見えない。田中絹代は、年をとってからの抑えた演技のおばぁちゃんのほうが品がいい。


製作年 1947年
製作国 日本
配給 松竹
上映時間 96分
企画:絲屋寿雄
原作:長田秀雄
脚色:依田義賢
監督:溝口健二
撮影:三木滋人
録音:橋本要
美術:本木勇
音楽:大沢寿人
キャスト:田中絹代、山村聡、毛利菊枝、朝霧鏡子、渡部冴子

☆☆2
(シ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : 歴史上人物 ☆☆2

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頭の蠅

『歌麿を巡る五人の女』 絵描きの男と、モデルの女
『女優須磨子の恋』 劇の演出家の男と、女優
映画監督の男と女優を間接的に描いている作品、つまり田中絹代に対する溝口健二のラブレターとも思えるが.
もしそうした意味合いがあるならば、描こうとしたものは逆.世間一般に言われているように、溝口健二が田中絹代とと結ばれたいと思っていたならば喜劇を撮るはずで、むしろ、田中絹代の想いを拒むために悲劇を撮っていると思われるが.

この後しばらくして、田中絹代は親善特使として招待されアメリカへ行った.
出かけるときは着物姿.
アメリカで大歓迎を受けた彼女は浮かれ上がって帰ってきた.
帰ってきたときは銀狐のコートで、オープンカーでパレードして沿道の人々に投げキッス.
皆から何を言われたかは、あえて書かずに置こう.....

そんなこんなで色々あって、田中絹代は映画監督になろうとした.
『大女優のプライドを捨てろ.車で来るな.撮影中は座ってはいけない』と言う条件で、成瀬巳喜夫の『あにいもうと』の撮影で、助監督になることが出来た.
が、この映画、どう考えてもラストシーンの最も重要な会話を、主演女優の二人が間違えている.真夏の炎天下、田んぼの中のロケ、暑さで皆頭がぼけていたせいもあろうが、田中絹代が監督を出来るかどうか、小津安二郎等の面々がおせっかいを焼きに来て、撮影を邪魔したのではなかろうか.

次作、監督第一回の『恋文』も、脚本を書いた奴等が原作者の意図を取り違えている、酷い作品と言える.
が、それはそれとして、『これじゃとても撮りきれない』と言って、木下恵介が書いた脚本を成瀬巳喜夫がばっさりと削ってしまった.
ま、それもよいとして、『主演の俳優が気に入らない』と田中絹代が言ったところ、成瀬巳喜夫は『自分の頭の蠅も追えないやつが、何を言うか』と言ったらしい.
一般的には、監督の能力がない、つまり役者の演技指導を満足にできない奴が、と受け取られているようだが、私には『頭の蠅』とは、撮影中に映画監督の頭越しに口出しする奴、と思えるけど.....

Re: 頭の蠅

rumichanさま

コメントありがとうございます。

溝口健二と田中絹代の関係について、いろいろとご指摘ありがとうございます。

私自身、二人の関係について不勉強なところもあり、
溝口がこの映画をどういうつもりで撮ったのかわかりません。

監督と女優の関係は、いつの時代でも複雑で興味深いものですね。   ヒデヨシ

プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


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