「突然炎のごとく」フランソワ・トリュフォー

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フランソワ・トリュフォーの一番好きな映画かもしれない。このテンポ。この疾走感。この無邪気さ。人生を前のめりに走り切ろうとするこの感覚は、ゴダールの『勝手にしやがれ』にも通じるような気がする。1961年のこの軽やかな映画こそ、時代の先端を走っていたヌーヴェル・ヴァーグの輝かしき1本だろう。ジャンヌ・モローが男装して3人で鉄橋を競争するシーン(写真)のなんと輝かしく初々しいことか。ラウル・クタールの手持ちカメラと役者たちの躍動感、ジョルジュ・ドルリューの軽やかな音楽、テンポのいい編集。ジャンヌ・モローが歌う『つむじ風のシャンソン』がいつまでも頭を離れない。

つむじ風のシャンソン

前半は特に早口のナレーションでフランス人のジム(アンリ・セール)とオーストリア人のジュール(オスカー・ウェルナー)の出会いと友情から、カトリーヌ(ジャンヌ・モロー)という運命の女と出会うまで、その3人の描写がテンポよく語られる。それは後半のまったりと複雑にもつれた三角関係の停滞した描写と対照的だ。恋というものはなんと面倒で複雑なんだろう。前半部のように軽やかに遊び続けた3人でいられないものなのか。

ジムとジュールは文学青年で文学や演劇のことなどいつも語り合っているが、性格は正反対。女性扱いも上手いジムに比べて、不器用で女性と関係が持てないジュール。そこに自由奔放で恋多き女、カトリーヌが現れ、二人を虜にする。男二人と女一人の三角関係の映画は数多く作られているが、この映画は、その後の様々な作品に影響を与えたものと思われる。『明日に向かって撃て!』や『冒険者たち』などなど。

3人がサントロぺのバカンスで自転車を乗りまわすシーンがいい。結婚を迫るジュールにカトリーヌは「あなたはうぶ。私は男を知ってる。釣り合いが取れるわ」と答える。この幸福に満ちた自転車のシーンは、後半、友人のアルベールをも巻き込んで複雑になった三人が過ごす山荘のシーンでも使われる。林や森の中を走る自転車は、カトリーヌそのものだ。そしていつもジムは、そんなカトリーヌの後姿を見ている。

つまりこの映画は、人物たちの動きの躍動と停滞が対照的に使われている映画だ。後半の山荘でのさまざまな部屋でのシーンには、もはや躍動はない。娘を交えての遊びのシーンはあるものの、大人になってしまった3人は、男女の関係の複雑な糸が絡まりあい、空気がだんだんと重くなっていく。

霧に包まれた湖畔のシーンやパリに帰るジムを送りに行った時の寒々としたホテルの部屋。鏡に移った化粧を落とすカトリーヌの表情が何とも言えない。ジムとカトリーヌの手紙のやり取りが行き違い、3人はただただ悩み、佇むのみだ。あれほど走り続け、二人を追いかけさせたカトリーヌも部屋に閉じこもるだけ。

最後に再びパリで再会した時のカトリーヌは、ジムの部屋の前の広場で、車を無謀に運転する。鉄橋を走り抜け、海へと旅立ち、自転車を乗り回し、動き続け、じっとできずに男たちのあいだをさ迷い続けたカトリーヌは、あてもなく衝動的に車を走らせるしかなかったのだ。走ることから自転車へ、そして車へ。かつてカトリーヌは、演劇鑑賞の帰りの夜道で突然川に落ちたことを繰り返すように、車で橋から転落する。あらかじめ決められた運命かのように川への転落を繰り返すのだ。そんなつむじ風のように走り続けたカトリーヌをずっと見続けたジュールと彼女を追いかけそこなったジム。

奇跡的なまでの躍動と複雑に絡まった関係の停滞が描かれているフランソワ・トリュフォーの最も美しき映画だ。


突然炎のごとく(1961)
JULES ET JIM
JULES AND JIM
上映時間 107分
製作国 フランス

監督: フランソワ・トリュフォー
原作: アンリ=ピエール・ロシェ
脚本: フランソワ・トリュフォー、ジャン・グリュオー
撮影: ラウール・クタール
音楽: ジョルジュ・ドルリュー
出演: ジャンヌ・モロー、オスカー・ウェルナー、アンリ・セール、マリー・デュボワ、サビーヌ・オードパン、
ミシェル・シュボール

☆☆☆☆☆☆6
(ト)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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