「小早川家の秋」小津安二郎

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小津安二郎はだいたい見ているのだけれど、レビューでも書いておかないと何がどんな映画だったかすぐ忘れてしまう。小津映画はタイトルを見ても似たようなものばかりで、内容を思い出せないことが多い。全部同じような映画ともいえる小津安二郎。縁談を持ちかけられる未亡人や未婚の娘たちと世話を焼くオヤジたち。そんな結婚話と誰かが病気になると親戚が集まって大騒ぎがあり、そして誰かが死ぬという「死」にまつわる家族の物語。「結婚と死と家族」がいつも描かれているのだ。

さてこの作品は、小津安二郎の様式美がかなり徹底されている作品だ。テンポよく繰り返される台詞や同じ人物配置のショット、または同じタイミングで座り立ち上がる動作の相似形、家族がみんなで一斉に立ち上がり同じ方向(大旦那の中村鴈治郎)を見る不自然なまでの動き、葬式の橋の行列や火葬場の煙突の煙をみんなで眺める場面などなど。役者の動きがすべて統一され、自由を奪われ、計算され尽くしている。動作の相似的な演出と反復、そしてその形の美しさにこそ小津はこだわった。もちろん、部屋の奥行きを見せるための襖や戸の開いている位置や小道具の配置の一つ一つまで、細部にこだわりを見せていることは言うまでもない。
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この映画でただ一人生き生きと活動的なのは、大旦那の中村鴈治郎だ。中村鴈治郎がいそいそと路地を歩くシーンがなんともいい。テンポのある音楽とともに、嬉しそうに小走りで女のもとへと急ぐ姿が何回か繰り返される。まさに喜びに満ちた運動そのものだ。それを後ろから番頭(藤木悠)がつける場面もまたユーモラスだ。娘の目を気にしながら大旦那が孫とかくれんぼをしつつ、こっそり出かけていくシーンも笑える。部屋着から外出する着物に着換える身振りも何回か繰り替えされる。そのいそいそとした身振り。あるいは、長女・新珠三千代の皮肉に何度も「なんじゃい」と毒づき、扇子をいつも片手にパタパタと仰ぐ動作も彼のキャラクターをアクションで演出している。彼以外の人物が不自由なまでに動きを抑制されているのに比べ、大旦那だけが自由でアクティブなのだ。

女道楽ばかりしてきた大旦那は、昔の愛人(浪花千栄子)と再会して佐々木の家に足繁く通う。その娘の百合子(団令子)は大旦那を父かどうかの確信もなく「お父ちゃん」と呼び、何度もミンクのストゥールをねだる。繰り返し反復することが小津映画のリズムを生む。大番頭(山茶花究)と番頭(藤木悠)の会話(「ちゃうちゃう」と何度も言う大番頭)と同じアングルの2ショット。さらに、長男の未亡人・原節子と次女・司葉子が全く同時に座り、会話をやり取りをした後で、また同時に立ち上がる相似形の不自然なまでの動きも何回か繰り返される。二人でまるで息を合わせたかのような動作の相似だ。

老年になった男と女の恋と家族の心配と軋轢、さらに縁談に悩む対照的な二人の女性。未亡人であることをこれからも受け入れる原節子と、自分の意中の男性(宝田明)の元へと行く決断をする司葉子。そして古くからある造り酒屋が大きな会社と合併せざるを得ない時代の節目など、さまざまな人間模様が全く隙のない映像とともに描かれる。抑制されたまわりの家族たちの動きと対照的な大旦那のアクティブな動き。それが見事なまでの計算と様式美で描かれた完成度の高い作品だ。

それにしても札幌に赴任する送別会の歌の場面は、なんとも時代を感じる不自然さだった。あんなふうに飲んだ席でみんなで唄を歌っていたのだろうか。


原題 The End of Summer/Early Autumn
製作年 1961年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 103分
製作:藤本真澄、金子正且、寺本忠弘
脚本:野田高梧、小津安二郎
監督:小津安二郎
撮影:中井朝一
音楽:黛敏郎
美術:下河原友雄
照明:石井長四郎
録音:中川浩一
スチール:秦大三
キャスト:中村鴈治郎(二代目)、原節子、小林桂樹、新珠三千代、島津雅彦、司葉子、宝田明、浪花千栄子、団令子、加東大介、森繁久彌、山茶花究、藤木悠

☆☆☆☆☆5
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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