「捜索者」ジョン・フォード

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この映画で描かれる先住民(コマンチ)は、偏見に満ちた残虐で卑劣な絶対悪である。白人を殺され連れ去られた先住民への復讐と対決という人種差別的な世界観で撮られたこの西部劇、今見るとなんだかゲンナリしてくる。陳腐な勧善懲悪物語である。しかし映画はストーリーがすべてではない。そんな偏見に惑わされずジョン・フォードの映画そのものを見てみると、家と荒野との<境界>が強調された映画であることがわかる。

白人と先住民のそれぞれの家に住まう者たち(家族)と、家族になれない男、その家と家との間である荒野を彷徨う者(ジョン・ウェイン)の孤独な物語であることが見えてくる。そして「家族の死体を見る」のはその孤独な「荒野の男」だけであり、「死体を見せないこと」「描かないこと」(=省略)で「家族」と「家族になれない孤独な男」を描こうとしたジョン・フォードの演出が感じられる作品だ。

冒頭、家の中から見たテキサスの荒野の映像がある。開けられた扉で黒く縁取られた荒野の明と暗の構図。南北戦争が終わったテキサス。そしてその何もない荒野の中を一人の男が馬に乗ってやってくる。イーサン・エドワーズ(ジョン・ウェイン)は兄のエドワーズ一家を久しぶりに訪ねてきたのだ。

そして映画のラストを思い出してみよう。無事に先住民(コマンチ)の元から姪のデビー(ナタリー・ウッド)を奪還したイーサンは、再びこの家に戻ってくる。喜びとともに家の中で再会する家族たち。しかし、イーサンだけは、家の中に入らない。荒野に佇み、画面は溶暗し、「THE END」。つまり、イーサンとは「荒野の人」であり続けたのだ。決して、エドワーズ家の一員にはなれない。姪のデビーは、先住民に連れ去られ、一度は先住民の家の者になる。「もう帰らない。私はここにいる」と居場所を先住民の家に見出す。しかし、先住民と白人の混血であるマーティン(ジェフリー・ハンター)が仲立ちとなり、再びエドワーズ家に戻ってくるのだ。デビーはどちらでも家族の一員になれる存在だ。それに比べて、イーサンはあくまでも家族にはなれない「荒野の人=捜索者」であり続ける。この映画は、そんな荒野の「捜索者」でしかあり続けることができない男の物語なのである。

もう一つ、演出的に注目されるべきところは、「描かないこと」と「死体が隠される」ことだ。

先住民がエドワーズ家族を襲いにやってくる場面がある。ここでは襲いに来る先住民は決して描かれない。家の中で外を見つめる姉ルーシーの叫び声が描かれるだけだ。(ロケとセットの現実的な事情があったとしても、そんなことは問題ではない。)

エドワーズの家が先住民に焼き払われ、兄夫婦が殺され、ルーシーとデビーという二人の姪たちが連れ去られる。それをイーサンとマーティンが発見する場面。イーサンが家の中で、頭の皮を無惨にも剥がされた兄夫婦の死体を見つけるが、カメラは家の中には入らず、死体は映さない。マーティンにも「中は見るな」とイーサンが言う。

捜索の途中、ルーシーの無残な死体もイーサンによって発見されるが、映画はそれも描かない。悲惨な死の埋葬は、イーサンの語りだけだ。イーサンは「(死体の)絵でも書けっていうのか?」と逆ギレる。もちろん、頭の皮を剥ぐという残酷な死体は描けなかったという現実的な理由もあるだろう。しかし、家族の死体は、イーサンだけが見ることができるという特権的なものになっており、画面には描かれず、家族にも「見ることができない」のだ。捜索に同行したルーシーの恋人のブラッド(ハリー・ケリー・ジュニア)は、イーサンによってルーシーの死を聞かされ、逆上し、先住民のキャンプに突入し撃たれるのだ。ここでも注目すべきは、この場面が銃声の音だけで描かれることだ。家族的な人物たちの死は、巧妙に隠され、省略されているのだ。

一方、先住民の死体は映される。イーサンは残虐にも死体に銃弾を撃ち込んだりもする。「目を失った死人は天国へ行けず風の中をさまよう」と言いながら。イーサンの先住民への偏見は何か病的なものが感じられる。そこに、家族の一員になれず「荒野の人」でありつづけるイーサンの孤独と病める魂が見え隠れする。

テキサスという何もない荒野で、ささやかながら家を築き、家族的幸福を享受するものたち(それは先住民であっても同じことだ)と、荒野を彷徨うだけの男が対比的に描かれ、その家と荒野との境界こそが強調された映画なのだ。つまりテキサスという荒野そのものを描いた映画とも言えるだろう。


原題 The Searchers
製作年 1956年
製作国 アメリカ
製作:ワーナー・ブラザース
配給:メリアン・C・クーパーパトリック・フォード
監督:ジョン・フォード
脚本:フランク・S・ニュージェント
原作:アラン・ルメイ
撮影:ウィントン・C・ホック
音楽:マックス・スタイナーキャスト
キャスト:ジョン・ウェイン、ジェフリー・ハンター、ヴェラ・マイルズ、ワード・ボンド、ナタリー・ウッド、
ジョン・クオウルン、オリーブ・ケイリー、ヘンリー・ブランドン、ハリー・ケイリー・ジュニア、アントニオ・モレノ、パトリック・ウェイン

☆☆☆☆4
(ソ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : 西部劇 ☆☆☆☆4

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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