「良いものはカタツムリのように進むのです」

「たわいもない話」ができることこそ、ひょっとしたら幸福の鍵が潜んでいるのかもしれない…と先日の映画(『その夜の侍』)を観て思った。

意味のあることばかり求めても味気ない。この世はほとんど無駄なことで成り立っている。無意味や無駄と思えることをバカにしてはいけない。意味に還元できることなど、たいしたことではないのだ。結果ばかり求めてもしょうがない。


きのうBSでイタリアの田舎を映した旅番組で、イタリアの老人が「俺はずーっと小さい頃からここで、家具の修理をしているんだ」と語っていた。

「変わらないこと」ってとても凄いことかもしれない…と思った。昔と変わらず家具の修理をし続け、友と「たわいもない話」をしながら酒を酌み交わす生活。それで十分、幸福を感じられればそれでいいと思うのだ。

「変ること」「スピード」「成長」「効率性」が今の日本では求められる。変わり続け、走り続けること、そこにどれだけの豊かさがあるのか。

「日本の保守のねじれ」のことを考えていたら、中島岳志とドキュメンタリストの想田和弘が「自民党も維新も保守じゃない」と同じような「ねじれ」のことを語っていた。

熱狂のサイクルに巻き込まれないために 中島岳志×想田和弘

今の時代要求される「スピード感」こそ、危ういという話だ。ネットを見ていても、ニコニコ動画を見ていても、退屈な話にはすぐに突っ込みのヤジが入る。『朝までテレビ』のように、話がバトルにならないとつまらない。もたもたしていることにみんなが我慢できなくなっている。人の話などゆっくり聞かない。そして、わかりやすさと単純化が求められる。

「良いものはカタツムリのように進むのです」とはマハトマ・ガンディーの言葉だそうだ。

中島岳志がNHKの『その時歴史が動いた』のリサーチャーのバイトをやっていたときのことを語っていた。「その時、歴史なんか動かない」のに、作り手は「その瞬間」に向けて物語を創っていく。歴史は複雑に絡み合ってゆっくりと動いているのに、物語を単純化させ、わかりやすい話にする。それがテレビの罪だと。

スピード、変化こそ大事だと言い、複雑な政治を分かりやすく語り、単純化させ、「変らなきゃ乗り遅れるぞ」と脅し攻め立てる人たちがいる。

先日、町田康が新聞でアメリカ大統領選のショー化されたテレビ討論について書いていた。「正しいことを言っている感じ感、を演出すればよいのである」と。「勝った」ように見せること。「正しい」ことのように振る舞うこと。そして、「正しい感じ感感、から、正しい感じ感感感、感じ感感感感、と言った具合に本道から外れていく。」と。

政治は勝ち負けなの?

そして、すぐに変わらなきゃダメなの?そんなにスピードって必要なの?と思う。

ケータイやネットの発達とともに、すぐなんでもわかり、すぐ連絡が取れ、すぐ結論が求められる時代になった。「時間を無駄にするな、急げ急げ」「がんばれ、がんばれ」。待ってられない…。

首相の支持率は選挙直後は高くても、すぐに下がっていく。期待はすぐに諦めに変わる。だから次々と変わる。ダメだダメだの大合唱だ。

じっくり、ゆっくり考えてもいいんじゃないの?変わることだけが大事なの?急ぐことがそんなに必要なの?

老いていく日本にあって、そんなことを思うのだ。

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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