「北のカナリア」阪本順治

カナリア

やたら雪の中を歩きながら話をするシーンが多い。吉永小百合が昔の教え子たちを訪ね、話を聞くうちに少しずつ昔のあの日のことが明らかになっていく仕掛けなのだ。だけど、北海道の人間はこの雪の寒さの中であんな風に話をしない。こみいった話をするのは冬は屋内だ。何も好んで寒い外を歩きながら話はしない。しかも手袋もしないで。北海道の寒さをなめんなよ~という感じがした。そんな寒さのご都合主義的な描き方からして、形式的な映像なのだ。

そんなことがやたらと不自然だったように、この映画はどこか作為的だ。物語が広がり過ぎて、とってつけたような説明が多い。だからエピソード一つ一つが軽いのだ。とてもご都合主義的である。

そして最大の欠点は、物語の核心となる吉永小百合と仲村トオルの物語が描かれていないのだ。だから誰も吉永小百合に共感できない。仲村トオルのエピソードも突然、唐突に描かれているだけで、二人が惹かれあう過程も思いも何もない。子供たちでなくても、これでは分からない。さらに吉永小百合と柴田恭平夫婦の溝がなぜこうなったのかも描かれていないので、脳卒中の苦しみも犬への虐待も客に響いてこない。それは、子供たちのそれぞれのエピソードも同じだ。すべてが軽く、辻褄合わせでしかないのだ。

だからこの映画の興味は、謎解きミステリーでしかない。なぜ子供たちに慕われていた女性教師が石を投げつけられ追われるように島を離れるようになったのか。子どもたちが喧嘩した後の海辺のバーベキューの日に何が起きたのか。そして教え子の一人、森山未來殺人の理由とは何か?その謎を最初に観客に見せ、少しずつ吉永小百合の旅で明らかにされていく。その謎解きに、ラストの合唱に向けた『砂の器』のような生きるせつなさの情感が絡んでくる。

たしかに森山未來の芝居はいいし、ラストの合唱場面は泣かせるものがある。ロシア民謡はなんて哀愁を帯びていて哀しいのだろう。歌をみんなで歌ったあの懐かしき幸せな日々への郷愁。子どもたちのあの時の思いには共感できる。

それでも映画全体としては、辻褄わせの失敗作でしかない。寒さも死への恐怖も生きることの喜びもすべてが軽いエピソードの羅列で、ご都合主義的でしかない。

それにしても吉永小百合のキスシーンまであるとは驚きだ。さすがに無理があるような気がしたが、吉永小百合がいるだけでやはり吉永小百合の映画になってしまうことは、すごい。


製作年 2012年
製作国 日本
配給 東映
上映時間 130分
監督:阪本順治
企画:黒澤満
プロデューサー:國松達也、服部紹男
原案:湊かなえ
脚本:那須真知子
撮影:木村大作
美術:原田満生
音楽:川井郁子
編曲・音楽監督:安川午朗
キャスト:吉永小百合、柴田恭兵、仲村トオル、里見浩太朗、森山未來、満島ひかり、勝地涼、宮崎あおい、小池栄子、松田龍平


☆☆☆3
(キ)
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tag : 人生 サスペンス ☆☆☆3

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