「脳には妙なクセがある」池谷裕二(扶桑社)

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脳科学で行われている様々な研究を紹介しながら、「よりよく生きるため」のヒントを教えてくれる本。池谷裕二さんは糸井重里さんとの共著『海馬』も面白かった。

脳が身体を司っているのではなく、身体がいかに脳に多くの影響を与えているかが書かれている。だから脳を過大評価してはいけない。つまり「自由意志」なるもので、人間が動いているのではないということだ。「自由意志」とは一種の幻想であり、身体的な反射や脳のクセがいかに人を動かしているかを教えてくれる。自分のことを自分でわかったようなつもりでいるな!という本である。

いくつかの示唆的な話を具体的に列挙してみた。

*歳を取ると、より幸せを感じるようになる!
人生に幸せを感じる度合いは、U字曲線を描く。20歳以前まで高かった幸福度は、20代で一気に落ち込み、
40代から50代前半頃までが最低迷期となる。そして、これを過ぎると回復を始め、調査された最高齢である
85歳に向けて徐々に上昇する。人生の幸福度のピークは老年期なのだそうだ!低迷期からピークへ。希望が持てる調査データである。


*健全な精神は健康な胃腸に宿る
消化器官の出すホルモンには血流に乗って脳に到達し、神経機能に影響を与えるものが少なくない。つまり、胃腸の具合が脳の状態とリンクしている。胃腸が丈夫だということが生きる上で大事なんですね。そのためにはちゃんと「食べること」が生きる基本なのです。


*ヒトは自分のことを自分では決して知りえない 
私たちは意識上では自由に行動しているつもりであっても、自覚できない行動のクセがある。自由意志は脳から生まれるのではなく、周囲の環境と身体の状況で決まる。自由意志とは本人の錯覚であり、行動の大部分は環境や刺激によって、あるいは普段の習慣によって決まっている。「反射」や「思考癖」や「環境因子」が決めたものを「自分で判断した」「自分で解釈した」と勘違いしている。

「ヒトは自分自身に対して他人なのです。」
脳という無意識的な自動判定装置の反射は、過去にどれだけよい経験をしてきているかに依存している。「よく生きる」ことは「よい経験をする」ことでもある。「よい経験」によって「よい癖」ができる。「頭がよい」とは「反射が的確である」こと。「反射力を鍛えること」こそ成長だ。

「自由意志」とは、意識に現れる幻覚。意思は脳の活動の結果であって、原因ではない。

大脳新皮質は、旧脳と異なり、身体性が希薄だ。大脳新皮質が主導権を持つヒトの脳は、身体を省略したがる癖が生じる。ヒトの心の実体は、脳回路を身体性から解放した産物。ヒトの脳は、身体の省略という美味しい「芸当」を覚えたがゆえに、身体性を軽視しがちだ。身体を動かさずに、頭の中だけで済ませた方が楽なのだ。しかし脳は、元来は身体とともに機能するように生まれたもの。手で書く、声に出して読む、オモチャで遊ぶー活き活きとした実体験が、その後の脳機能に強い影響を与える。

脳は出力することで記憶する。どれだけ脳に情報が入ってきたか(出力)ではなく、どれだけその情報を使ったか(出力)が、脳に記憶させる。

笑顔という表情の出力を通じて、愉快な心理状態を脳が生み出す。就寝の姿勢を取ることで眠くなる。何事も始めた時点で、もう半分は終わっているようなもの。出力(経験)を重要視すること。脳を身体の上位に置くのではなく、心は身体から派生する。

人間の肉体は一つの大きな理性である  ニーチェ




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