「コミュニティを問いなおすーつながり・都市・日本社会の未来」広井良典(ちくま新書)

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市場経済の成熟期、定常化時代を迎えるにあたり、新たな価値観が求められる。そこで重要なキーワードは「コミュニティ」だと著者は書く。「コミュニティ」のあり方、本質を論じながら、新たな「コミュニティ」の創造について、様々な角度から論じている。大佛次郎論壇賞。

会社や家族という「共同体」を築き、都市をムラ社会化しつつ、経済成長してきた時代がいま終わろうとしている。そして、個人の社会的孤立感は深まっている。「個人」が独立してつながりながら、いかにして新たな都市型コミュニティを創造できるか?「人と人との関係」になかにこそ、そのヒントはある。

人間の歴史は三度の「拡大・成長」と「定常化」のサイクルを経過。
・10万年以上前の人類が道具の使用・製作を始めた時期が第一の拡大・成長
・紀元前8000年前~4000年前の農業を始め、都市をつくるようになった時期が第二の拡大・成長
・18世紀以降の近代科学が生まれ産業化がスタートした時期が3つ目の拡大・成長。

いま「自然」を収奪し成長する時代は終わり、「人間と人間」の関係、自然の新たな収奪や物質的・量的拡大という方向ではなく、個人や文化の内的な発展あるいは質的深化とともに、「ケア」そしてコミュニティというテーマが前面に出る時代。

それは18~19世紀にかけて市場経済の拡大、資本主義の展開という流れが成熟ないし定常期に入り、その飽和とともに「市場経済を超える領域」が大きく展開する時代であり、そこでは「新しいコミュニティ」の創造が中心的な課題となる。

「働くこと」の動機づけにおける“非貨幣的な価値”の重要性、「コミュニティ」や「場所」の再発見。市場と政府のコミュニティ、「資本主義と社会主義のエコロジー」がクロスオーバーする社会像。

個人ー家族ー社会 
集団の内部の関係が<母親>との関係であり、個体を社会につなぐ外部との関係の原型が<父親>との関係。コミュニティとは、内部的な関係と外部的な関係の二重性がある。

「コミュニティ」とは、その成立の起源から本来的に、外部に対して「開いた」性格のもの。その外部のと接点、「外に開かれた窓」として
①「神社・お寺」などの宗教施設。彼岸、異世界との接点
② 「学校」は、新しい知識という外の世界との接点
③「商店街(市場)」は、他の共同体との接点
④「自然関係」は、自然という外の世界との接点
⑤「福祉・医療関係」は、病や障害という「非日常性」という外の世界との接点

戦後の日本社会は農村から都市へと大移動を行いつつ、都市の中に「カイシャ」と「(核)家族」というムラ社会をつくり、それらが経済成長という「パイの拡大」に向かって互いに競争するなかでそれなりの豊かさを実現してきた。つまり、農村的関係性を都市に持ち込むことを行いながらある時期まで一定の好循環を生み出してきた。

しかし人々の需要が飽和し、経済が成熟して従来のようなパイの拡大という状況がなくなったいま、「ウチーソト」を明確に区分し、集団の内部では過剰な気遣いが求められる反面、集団を一歩離れると何のつながりや“救い手”もないような関係性のあり方が、かえって人々の孤立や拘束感・不安を強め、また様々な“生きづらさ”の源となっている。つまり“個人が独立しつつつながる”という真の意味での「都市的な関係性」を作っていくことが求められている。

①ごく日常的レベルでの、挨拶などを含む「見知らぬ者」どうしのコミュニケーションや行動様式 
②各地域でのNPO、協同組合、社会的起業その他の「新しいコミュニティ」づくりに向けた多様な活動 
③普遍的な価値基準の構築 

<労働生産性から環境効率性へ>
「人が足りず、自然資源が余っている」状況では、資源を使い少ない労働力で生産性を上げることが大事だったが、「人は余り(=慢性的な失業)、むしろ資源が足りない」状況では、「人」をどんどん使い、資源消費を節約することが大事。介護や福祉や教育といった「人」がキーポイントとなる領域ー「ケア」に関わる領域ーへの積極的な投資が必要。介護は「労働生産性が低い」と言われているが、環境効率性はいい。

日本は、その他先進国と比べ、子ども・家族関係、若者関係、雇用政策、失業保障、住宅関連、生涯関連、教育など、「人生前半の社会保障」がとても低い。

格差が大きいのは、「フロー」(所得)よりも土地等の「ストック」(資産)面。
公有地の活用。公営住宅・公的住宅等の役割の強化。
相続税、土地課税、環境税について強化

市場経済に対する「事後的な再配分」ではなく「事前的な配分」とも呼ぶべき対応が必要。

福祉政策の中に「都市」あるいは「空間」的な視点を、導入することが必要。

市場経済の飽和状態であることを認識し、賃金労働時間を減らすとともにそれをコミュニティや自然等に関する活動の時間に振り向けていく(時間の再分配)。それは従来の営利と非営利、貨幣経済と非貨幣経済が交差するような領域であると同時に「新しいコミュニティ」(独立した個人間の開かれた性格のつながり)の舞台となる。それはまた「公―共ー私」がクロスしていく性格を持っている。

日本は普遍的な価値原理が空白。明治以降西欧的な思考の枠組みに「文明の乗り換え」を行い、キリスト教も受容せず、仏教・儒教も捨象し、普遍的価値原理が不在のまま、「経済成長」だけが「信仰」と呼べる絶対的な価値だった。

地球的規模の「有限性」と地域におけるリージョナルな住み分けのよる「多様性」にこそ、新たな「メタ普遍思想」とも呼ぶべき哲学の可能性があるのでは?



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