「アメリカの友人」ヴィム・ヴェンダース

アメリ~1

いま見ると、デニス・ホッパーもブルーノ・ガンツも若いなぁ。ニコラス・レイ(贋作画家)はカッコいいし、ダニエル・シュミット監督まで出ている(パリで殺される役)。ちなみにサミュエル・フラーは犯罪組織のボスで一言もしゃべらない。

この映画、以前にも見たのだけど、実はあまりピンとこなかった。サスペンスものなんだけど、まったりとした作りなのだ。まぁ、まったり感はいつものヴェンダース節なのだけれど、『都会のアリス』や『まわり道』『さすらい』『ゴールキーパーの不安』『ことの次第』などの停滞と彷徨のロードムービーものと比べても、なんだかピンとこなかったのだ。『パリ、テキサス』という傑作は、脚本家のサム・シェパードの功績が大きいと思うのだけれど、この『アメリカの友人』はちょっと『パリ、テキサス』に似た「美人の妻とかわいい子どもがいる家庭」が描かれる。だけど、ドラマとしてはせつないほどではなく、あまり盛り上がらない。

肝心の「なぜ彼が殺しを引き受けたのか」という心理描写も弱く、妻や子供への思いや、死への恐怖もあまり描かれていない。ドラマチックではないのだ。描かれるのは、カウボーイ男のデニス・ホッパーと額縁職人ブルーノ・ガンツの微妙な関係だ。

その二人の関係を取り持つのは、小さな絵のトリックオモチャだ。上下に動かすと表情が変わる写真や小さな箱の中を覗くと女性のプロマイドが見れるようなもの。映画のなかでは、子供の枕元に機関車の模型パネルがあり(リュミエール兄弟の映画「列車の到着」の汽車を思い出す)、映画の原型ともいえる回転のぞき絵(ゾエトロープ)で子供たちが遊ぶ場面もある。名だたる監督たちの出演だけでなく、小道具でも「映画」へのオマージュが溢れている。

あえて解釈しちゃえば、ドイツ人であるヴィム・ヴェンダースの「映画」を通じたアメリカへの愛憎物語でもある。「アメリカの友人」であるデニス・ホッパー(カウボーイハットは『イージーライダー』から?)に対して、ドイツ人のブルーノ・ガンツは、「絵を投資目的で利用する奴は好きじゃない」と言い、握手を拒否したことから物語は始まる。映画産業としてのアメリカ映画に嫌悪しつつ、ニコラス・レイやサミュエル・フラーやデニス・ホッパーへの愛を表現する。その二人の関係を結びつけるものが、映画の原型ともいえる絵のトリック玩具であり贋作の絵なのだ。つまり、映画という「だまし絵」で、二人は愛と憎悪(友情と反目)でつながっていく。それは同時に「死」というものでもつながっているところが面白い。

そんな適当な解釈よりも、僕はヴィム・ヴェンダースが作り出す映像がやっぱり好きなのだ。港や夜景や街や車や地下鉄や列車。せつないまでの空の赤さや画面での色使い。港の石畳の暗いトーンと赤い車ビートルに黄色いレインコートの子供と赤いコートの母。青の色の絵。パリの地下鉄の尾行シーンや額の傷はフィルム・ノワールのようだし、列車の殺人サスペンスはヒッチコックの映画のようだ。海辺のシーンや死へ向かって走る赤いビートルもなんだか切なく美しい。

物語がいい加減で、盛り上がりがなくても、なんだか好きになってしまう映画なのだ。


原題 Der amerikanische Freund
製作年 1977年
製作国 西ドイツ・フランス合作
配給 フランス映画社
監督: ヴィム・ヴェンダース
製作: ミヒャエル・ヴィーデルマン
原作: パトリシア・ハイスミス
脚本: ヴィム・ヴェンダース
撮影: ロビー・ミューラー
音楽: ユルゲン・クニーパー
キャスト: デニス・ホッパー、ブルーノ・ガンツ、ジェラール・ブラン、ダニエル・シュミット、ニコラス・レイ、リサ・クロイツァー、ルー・カステル

☆☆☆☆☆5
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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