「ムーンライズ・キングダム」ウェス・アンダーソン

ムーンライズ

マジックパワーに満ち溢れたキュートで幸福な映画。細部にこだわった映像が喜びに満ち溢れている。やっとやっと観ることができたウェス・アンダーソン。『イカとクジラ』をDVDで見て以来、僕は『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』も『ダージリン急行』も『ファンタスティック Mr. Fox』もことごとく話題作を見逃してきたのだ。

映画のあらゆるカットが、細部までこだわりぬかれている。色彩、衣裳、セット、小道具、カメラの動き、構図、役者たち。そのこだわりぬかれたカットからウェス・アンダーソンの映像を作る喜びが伝わってくるのだ。だから見ていてとにかく楽しい。映画の楽しさに溢れているのだ。

まずナレーター役に登場する赤いコートと緑の帽子の妖精のようなおじいちゃん!(ボブ・バラバン)が場所、アメリカのニューイングランド沖に浮かぶ全長26kmの小島、ニューペンサンス島と時代、1965年の大型台風に襲われた年であることを説明する。そして、双眼鏡で覗くピンクのワンピースの少女スージー(カラ・ヘイワード)を登場させ、横移動、縦移動のカメラで家の中を映し出す。子供たちの配置やセット。彼の映画の構図は、カメラに向かって正面を向いたものが多い。どこかアキ・カウリスマキや小津安二郎にも似ている正面の構図。さらに少年サム(ジャレッド・ギルマン)がいるボーイスカウトも横移動のカメラでテンポよく隊長のエドワード・ノートンによって紹介される。映画は創られたおとぎ話風であり、セットも衣裳も小道具もすべて意図的に配置されている。

『小さな恋のメロディ』を思い出すような少年と少女の恋の逃避行冒険物語であり、「ムーンライズ・キングダム」と呼んだ二人だけのキャンプ地、夢のような入り江が登場する。その入り江の浜辺で少年と少女が携帯レコードプレイヤーで音楽をかけて踊るシーンがとてもチャーミングだ。そして真横から二人を捉えた初めてのキスシーン。う~ん、きゅんきゅんするね~。

スージーの双眼鏡は彼女にとってのマジックパワーであり、サムの胸には母の形見のブローチ。虫のイヤリングやサムのメガネと毛皮の帽子など、小道具の一つ一つがニクいのだ。

脇役の役者陣がまた豪華なのだが、さりげなくていい。島のポリスのブルース・ウィリス、スージーの厳格な父にビル・マーレイ(ウェス・アンダーソン映画の常連)、ポリスが浮気相手の母にフランシス・マクドーマンド、冷酷な福祉局員にティルダ・スウィントン、別の島のボーイスカウトの隊長にハーベイ・カイテル。誰もが楽しそうに演じている。

エンドロールの音楽も楽しい。楽器の音の一つ一つに個性があり、それは登場人物一人一人の個性でもある。その音が合わさった時、楽しいステキな音楽が奏でられるのだ。


原題 Moonrise Kingdom
製作年 2012年
製作国 アメリカ
配給 ファントム・フィルム
上映時間 94分
監督:ウェス・アンダーソン
脚本:ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ
撮影:ロバート・イェーマン
美術:アダム・ストックハウゼン
衣装:カシア・ワリッカ・メイモン
音楽監修:ランドール・ポスター
音楽:アレクサンドル・デプラ
キャスト:ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード、ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン、ジェイソン・シュワルツマン、ボブ・バラバン

☆☆☆☆4
(ム)
スポンサーサイト

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : ファンタジー ☆☆☆☆4

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


twitter 719hideyosi

最新記事
お気に入り度
テレビドラマ「カルテット」
映画あいうえお順
カテゴリ
映画ジャンル&☆ランク
映画監督別
アキ・カウリスマキ
アラン・レネ
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
アルフレッド・ヒッチコック
アンドレイ・タルコフスキー
イエジー・スコリモフスキ
イザベル・コイシェ
ウェス・アンダーソン
ウディ・アレン
ヴィム・ヴェンダース
エドワード・ヤン
エミール・クストリッツァ
エリック・ロメール
オーソン・ウェルズ
ガス・ヴァン・サント
ギジェルモ・アリアガ
クエンティン・タランティーノ
クリント・イーストウッド
グザヴィエ・ドラン
コーエン兄弟
サム・ペキンパー
シドニー・ルメット
ジム・ジャームッシュ
ジャック・ロジエ
ジャン=リュック・ゴダール
ジョン・カサヴェテス
タヴィアーニ兄弟
ダルデンヌ兄弟
テオ・アンゲロプロス
テリー・ギリアム
ニキータ・ミハルコフ
ニコラス・レイ
パトリス・ル・コント
ハワード・ホークス
ビリー・ワイルダー
フェデリコ・フェリーニ
ファティ・アキン
フランソワ・オゾン
フランソワ・トリュフォー
ペドロ・アルモドバル
ポール・トーマス・アンダーソン
マイケル・ウィンターボトム
ミヒャエル・ハネケ
ラース・フォン・トリアー
ロバート・アルトマン
ロベール・ブレッソン
ロマン・ポランスキー

青山真治
今村昌平
犬童一心
石井裕也
大森立嗣
小津安二郎
北野武
宮藤官九郎
熊切和嘉
神代辰巳
黒沢清
是枝裕和
鈴木清順
園子温
成瀬巳喜男
西川美和
濱口竜介
深田晃司
藤田敏八
前田司郎
三木聡
山下敦弘
吉田喜重
読書感想・作家別
月別アーカイブ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
182位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
83位
アクセスランキングを見る>>
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
映画ベスト10 2009~2016年
2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
検索フォーム
ブックマーク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
FC2カウンター