「都会のアリス」ヴィム・ヴェンダース

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「都会のアリス」は、飛行機と車の移動の映画である。冒頭の飛行機のカットで始まる。ロードムービー三部作として、このあと「まわり道」「さすらい」と続く。そして「パリ、テキサス」として集大成されるのだが、この何も起こらない中年男と少女の彷徨こそ、ヴィム・ヴェンダースの基調トーンだろう。

ポラロイドカメラで、アメリカの風景を写し続ける男。しかし、アメリカをポラロイドカメラで撮っても、何も現実は映らない。ただ風景がそこにあるだけ。男はどうやらドイツからやってきて、アメリカののルポを書くことを仕事にしているようだ。だが、書く作業はまったく進んでいない。ポラロイド写真を撮るばかりだ。安モーテルでテレビを壊してしまうようなストレートな描写があった。不快なメッセージとしてのテレビ。ちょっとヴェンダースの若さを感じるシーンだけれど、それ以外は淡々とカメラはアメリカのフロリダの車窓の風景を映し続ける。のっぺりとしたアメリカの風景。そこには躍動も喜びも悲しみも人生も映らない。そしてドイツに帰ってから原稿を書こうと空港に行き、アリスに出会う。しかし、ストライキでドイツ行きの飛行機がなく、数日後のオランダ・アムステルダム行きしかないと告げられる。<と停滞>が、ヴェンダースのお決まりのテーマである。

英語が苦手なアリスの母親と一緒になり、行動を共にする。アリスの母親は男と別れて、アリスを連れてドイツに帰るらしい。しかし、母親は翌日、待ち合わせの場所のエンパイアステートビルの展望台に現れない。男とトラブルになっていて、「アリスを連れて先に行ってて…」というメッセージが残される。男はアリスを連れて、アムステルダム行きの飛行機に乗る。

少女アリスと男の。会話が弾むわけでもなく、ドラマが起きるというわけでもない。アムステルダムの空港にもなかなか現れない母親。泣き出すアリスに、オランダに住んでいるおばあさんのところに行くことにする。しかし、おばあさんが住んでいる街が分からない。街を彷徨う男とアリス。見つからないおばあさんの家。男は警察にアリスを預け、チャック・ベリーのコンサートに行く。しかし、アリスは警察で情報を聞きだし、男のもとに逃げ出してくる。おばあちゃんの家での「石炭の粉」の思い出がヒントとなり、居場所はルール地方らしいことが分かる。アリスが持っていた古い家の写真が唯一の手がかりだ。その写真は、彼がアメリカで撮ったポラロイド写真とは違って、存在感がしっかりとある。「時間」が写真に映りこんでいるかのようだ。

やっと見つけた写真と同じ家。しかし、そこにはアリスのおばあちゃんはいなかった。ニ年前に引っ越してきたという新しい住人。またしても、家さがしは振り出しに戻る。二人は公園に泳ぎに行く。このシーンはなんだかいい。アリスは、公園にいる女性に二人が父と娘に見えるかどうか聞いたりする。出会った女の部屋に行き、男が女と話していると、アリスは車で行こうと言う。二人の関係が少しずつ変わってきた。そして船に乗ってポラロイドカメラでアリスを覗いていると、警察に呼び止められる。「なぜ警察に知らせないのか?母親は帰国してミュンヘンにいるし、おばあさんの家もわかった」というのだ。

の最後、列車でミュンヘンに向かう男とアリス。彼はミュンヘンに戻って「物語を書く」というと、アリスは「落書きね」と皮肉を言う。彼が読んでいた新聞には、ジョン・フォードの死の記事が載っている。カメラは列車の窓から、空撮の俯瞰ショットになって終わる。

なんということはないのだ。男とアリスとのわずかばかりの心の交流は描かれるが、それは「ペーパームーン」のように男と少女の間でドラマが起きるわけではない。異邦人にとってのアメリカのとらえどころのない無表情な風景と居場所を求めての彷徨。ストレンジャーとしての空虚感ばかりがある。そして、後半はアリスとのアムステルダムの「写真の古い家」探しの物語だ。母親との葛藤もなければ、親子の絆や少女の大人への成長物語でもない。物語は車窓の流れる風景のように横滑りしていく。盛り上がるわけではなく、ただ流れていくのだ。その流れゆく風景を、確かなものにしようとして男はポラロイドカメラで撮り続けるが、何も感じないし、どんなものとも関われない。だから、男はアメリカで何も書けない。何も引っかからないのだ。

ただ唯一、引っかかったのがアリスとの偶然の道行きだ。何の因果か、アリスとすることになり、飛行機で、バスで、車で、列車でをする。オランダでの家探しで、アリスのわがままにうんざりしつつ、同じ時間を過ごす。それはアメリカの空虚な一人旅とは違う。そのアリスとの旅だけが、男の唯一の生きる手がかりのようなものになったのかもしれない。



原題 ALICE IN DEN STÄDTEN
製作年 1974年
製作国 ドイツ
配給 フランス映画社
監督:ヴィム・ベンダース
製作:ヨアヒム・フォン・メンゲルスハオゼン
撮影:ロビー・ミュラー
音楽:CAN
キャスト:イエラ・ロットレンダー、リザ・クロイツァー、リュディガー・フォーグラー、エッダ・ケッヒェル

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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