「ことの次第」ヴィム・ヴェンダース

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映画についての映画だ。フェリーニは『81/2』を撮り、ゴダールは『軽蔑』を撮り、トリュフォーは『アメリカの夜』を撮ったように、ヴェンダースは『ことの次第』を撮った。

映画のロケ隊がポルトガルの西海岸の片田舎で撮影が中断される話だ。フィルムがなくなって。世界に取り残されたかのように。その撮っていた映画そのものが世界に取り残されたSF映画「生存者たち(ザ・サバイバー)」という物語。ロケ隊と映画の物語の人物たちは、二重に「世界の中で取り残された者たち」である。宙ぶらりんの状態。どこにも行けない。ただ何もできない。ただ宙づりの中で時間を過ごすだけだ。本(ジョン・フォードの「捜索者」の原作)を読んだり、バイオリンを奏でたり、絵を描いたり、セックスをしたり、お酒を飲んだり、散髪に行ったり…。どこへも行けない中で、足止めをくらい、漫然と時を過ごすこと…、それは人生そのものでもあるのかもしれない。

そんなヴェンダースの旅と停滞。空間を移動していても心がどこまでも滞っているような状態。なにかを模索しているような、何かを探しあぐねているような彷徨がこの映画にも溢れている。列車、飛行機、車、キャンピングピングカーと移動する映像がいつものようにあり、ポルトガルの何もない海岸とホテルや部屋が前半はずっと続く。空っぽの空間と動き続ける風景。それはある意味、表と裏の同じ景色なのかもしれない。

そしてこれはヴェンダースの映画論でもある。映画に、人生に、物語は必要なのか?物語は物語の中にしかない…。

ポルトガルに取り残された監督フリッツ(パトリック・ボーショー)は、ハリウッドまでプロデューサーのゴードン(アレン・ゴアウィッツ)に会いに行く。探してやっと会えたゴードンは、どうやらヤバい組織の金に手を付けてしまって追われているらしい。キャンピングカーで夜の街を走りながら、フリッツとゴードンが話す場面がいい。窓の外の過ぎ行く街の風景。プロデューサーであるゴードンは、「どうして色がないのだ?」と詰問する。ドイツ人ではなく、アメリカ人の監督に撮らせていれば、こんなことにはならなかった…。資金も調達できたのに。「しかも俺はユダヤ人だ」とまでボヤく。「ビルに壁が必要なように、映画には物語が必要だ」とゴードンが言うと、フリッツは「物語は必要ない。人物と人物の空間で映画は作られる」、「物語は語れるが、残酷なことに物語が入ると生命が逃げていくんだよ」、「物語と共存できるのは死だけだ」、「物語は死の先ぶれだ」と話す。

そしてその言葉通り、プロデューサーのゴードンは間もなくピストルで撃たれ、フリッツもまた撃たれてしまう。最後にフリッツが武器のように相手に身構えて持つものは、ムービーカメラだ。撮ることだけが、死と立ち向かえるかのように。撮ることだけが、人生であり、死であり、物語であるかのように。

サミュエル・フラーが『軽蔑』と同じように出演し、ロジャー・コーマンもハリウッドの弁護士役で出ている。フリッツ・ラングやジョン・フォードへのオマージュも挿入される。残念ながら、僕はこれらの映画人の映画をあまり見ていない。言うまでもなく、この作品はヴェンダースのハリウッド映画へのオマージュであり、自らの映画への決意表明であり、愛である。『ニックス・ムービー』と同じように、『ハメット』撮影中断の際に作られた映画らしい。

ことの次第(1981)
DER STAND DER DINGE
THE STATE OF THINGS [米]
L' ETAT DES CHOSES [仏]
上映時間 127分
製作国 西ドイツ
監督: ヴィム・ヴェンダース
脚本: ヴィム・ヴェンダース、ロバート・クレイマー
撮影: アンリ・アルカン、マルティン・シェーファー、フレッド・マーフィ
音楽: ユルゲン・クニーパー
出演: パトリック・ボーショー、サミュエル・フラー、イザベル・ヴェンガルテン、アレン・ゴアウィッツ、ロジャー・コーマン

☆☆☆☆☆☆6
(コ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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