「愛、アムール」ミヒャエル・ハネケ

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ミヒャエル・ハネケの美しき傑作。画面に漲る緊張感と密度。音の使い方。二人にじっと寄り添うように見つめ続けるカメラワーク。『男と女』のジャン=ルイ・トランティニャンと『二十四時間の情事』のエマニュエル・リバの圧倒的な二人の存在感。この濃密な時空間を生み出したハネケの傑作に心震わせぬ者などいるのだろうか。素晴らしい映画だ。

と死、老いの問題などを真正面から取り上げた映画作家といえば、イングマール・ベルイマンを思い出したりもするが、彼がどちらかと言うと演劇的な映画監督なのに比べ、ミヒャエル・ハネケは徹底した映画の人である。

冒頭、クラシックのコンサート会場の客席が映し出される。そしてピアノの演奏が始まっても、画面はしばらく客席のままだ。安易に舞台上のカットを入れない。そしてコンサート終了後のシーンへ一気につながる。そんな簡潔で省略した画面作りは、老夫婦が自宅に帰ってきてからも同じだ。家の鍵が壊され、空き巣に入られた形跡があるのに、画面は安易にカットを切り返したり、積み重ねたりせず、長いワンカットで二人の動きと家の廊下を捉え続ける。なぜ鍵が壊されたのか説明されぬまま、悪い予兆のような出来事として提示されるのみだ。

もっともスリリングなのは、妻のアンナ(エマニュエル・リバ)が初めて意識を失って夫の呼びかけに答えなくなる場面だ。ここでもカット数はかなり少ない。単純な二人の切り返しの画面はあまりない。台所の水道を出して、タオルでアンナの首筋を濡らす夫のジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)。そして慌てて助けを求めるために、水を出しっぱなしにしながら別の部屋で着替えをしていると、水の音が止まる。この緊張感はまるでサスペンス映画のようだ。カメラは夫の後ろから手持ちカメラで移動しながら、夫とともにキッチンに戻り、妻を映し出す。このシーンの音の使い方とカメラワークから感じられる緊張感。なんという素晴らしいシーンだろう。

この台所の水の音は、ラスト近くの皿を洗う音が横になっているジョルジュのもとに聴こえてくるシーンでも、再び効果的に使われる。このラストへつながっていくこの後のシーンのなんという見事さよ!

ピアノの音、CDの音、アンヌの叫ぶ声、すべての音が計算されつくされ、画面の密度を高めている。さらにアンヌの魂の化身であるかのような鳩。アンナが最後に楽しかった思い出を片言で語る場面は涙を誘わずにはいられない。

多くのことを細部まで描かずに、映画はほとんどが室内で展開される。ここまで深く強く二人の存在の気高さとを描き出した密度の濃い映画があっただろうか。感想の言葉を失うほど素晴らしい映画だ。



原題:Amour
製作年:2012年
製作国:フランス・ドイツ・オーストリア合作
配給:ロングライド
監督:ミヒャエル・ハネケ
脚本:ミヒャエル・ハネケ
撮影:ダリウス・コンジ
美術:ジャン=バンサン・ピュゾ
キャスト:ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リバ、イザベル・ユペール

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