「勝手にしやがれ!!成金計画」黒沢清

成金

ヘロインの白い袋をヤクザ同士の抗争現場に居合わせた女(鈴木早智子)が偶然、手に入れた。その大量の白い袋のヘロインをめぐってのドタバタナンセンス活劇である。シリーズを追うごとに、そのナンセンスさは増幅されていくような気がする。5作目のこの作品に到っては、バカバカしいほどの無意味さを彼らは駆け巡る。1袋800万円の白い袋が、8000万円、さらには8億円と増え続け、その価値が膨れ上がり、命は狙われ、妙な男たちがやってきて、大騒動になる。お人好しの便利屋コンビ、お馴染みの哀川翔と前田耕陽の二人の前に、今回はWinkの鈴木早智子が、ゴミの山に車を暴走させて、運転席で気を失って登場。彼女の置き忘れたバッグの中に、ヘロインの袋があったというわけだ。

この映画は、何度も同じシチュエーションが反復される。鈴木早智子のゴミの山への車の暴走と気絶。ヤクザの子分たちがヘロインを寄越せと現れ、親分からの電話で退散していく場面、もう一人の麻薬バイヤー男の登場の繰り返し。そして、コインロッカーから何度も取り出す白い袋。

白い袋が800万だろうが、8億だろうが、結局交換できなければただの白い粉にすぎない。これはある意味、資本主義経済の幻想を描いてもいるのだ。貨幣だって、交換されなければ価値を持たないただの紙でしかない。モノの価値は交換されることによって生まれる。交換されなければ、ただその物自体の価値でしかない。ヘロインの白い袋も、金に交換できなければ無用のモノ。片栗粉より価値がない。かくして彼らは、白い袋とともに増幅される幻想に振り回され、抗争に巻き込まれ、命を狙われ、ヘトヘトになって、ついには白い袋を便所に流す決意をする。一方で、麻薬密売人やヤクザたちは、その価値の幻想から抜けられず、無駄な撃ち合いをしながら死んでいく。

鈴木早智子が手に入れたのは、お金ではなく一つの決意だった。奥さんを別れて自分と一緒になってくれ!という想いを男に伝えること、そして男(塩野谷正幸)と女(鈴木早智子)の人生は変わった。

資本主義社会の経済の幻想と呪縛。交換しつづけることができず、滞留するもの(白い粉)は邪魔物でしかない…。滞留するモノの価値の幻想に囚われ続けると無駄な争いを続けるだけだ…という壮大なテーマを全くナンセンスな活劇としてバカバカしく描いているのだ。殺し合いが、まったくゴッコ遊びのようにナンセンスにバタバタと死んでいくあたりも黒沢清らしい。長回しの移動撮影がその滑稽な人物たちの動きを、距離感を持って描いている。


製作年 1996年
製作国 日本
配給 ケイエスエス
監督:黒沢清
脚本:じんのひろあき、黒沢清
企画:伊藤靖浩、神野智
キャスト:哀川翔、前田耕陽、鈴木早智子、塩野谷正幸、洞口依子、大杉漣

☆☆☆☆☆5
(カ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : ハードボイルド ☆☆☆☆☆5

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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