「勝手にしやがれ!!逆転計画」黒沢清

シリーズ4作目。金は天下のまわりモノ。運とツキをめぐる騒動。黒沢清のこのシリーズは、脱構築的な映画とも言える。物語が作られては解体されていくのが特徴的だ。本来、物語を推進させるものとして、欲望がある。恋や性欲、金や権力欲、恨みや復讐など。それらの欲望や情動が要因となって、物語が動いていく。しかし、この映画の登場人物たちは、恋にも金にも最終的には執着しない。一目惚れで恋は発動するものの、すぐにマドンナ自体のとんでもない行動によってその恋物語は解体される。金を手に入れたいという欲望も物語の発端として駆動するものの、いつしか金への執着が別の登場人物たちの行動によって相対化され、ぐるぐるまわるだけとなり、金そのもののへの欲望も消えうせる。そんな風に物語が欲望の葛藤によって盛り上がらずに、あっさりと解体され、ズラされていくところが面白い。

第1作と同じようにマドンナ(1作目は幼稚園の保母の七瀬なつみ、今回はタバコ屋の娘の仁藤優子)に雄次(哀川翔)は一目ぼれする。しかし、彼女に近づこうとするがうまくいかない。借金のカタにとった車は廃車になるし、テレビは壊れるし、麻雀は負け続け、全くツイていない雄次。やっと運がまわってきた福引でウォークマンが当たるが、相棒の耕作(前田耕陽)が特賞のハワイ旅行を当てる。ついには競馬で全財産をつぎ込むが失敗。そんな時に道端で倒れているヤクザ(下元史朗)から現金1000万円を手に入れる。天から降ってきたように、ご都合主義的に1000万の大金を手に入れる。その1000万円が、今度はマドンナさつき(仁藤優子)の父(河原崎建三)に盗まれる。その1000万をめぐってヤクザに追われて、逃げ惑うことになるのだが、さつきと父はなんとその1000万円を競馬に全額つぎ込んで失ってしまう。

大金への欲望は、マドンナ親子の行動によって一瞬のうちに消えうせる。本来なら、その奪われた金をめぐる欲望が物語の推進力になるのだが、雄次たちも、金を奪われたヤクザ下元史朗も、使い込んだ仁藤優子と河原崎建三親子も、みんな一緒になってただ困り果てるのだ。ただ不運を嘆くように。奪い合いの欲望のドラマにはならない。

そんな運と不運をめぐってお金はぐるぐるとまわっていくことが、仕方がないことのように彼らは行動する。運があれば、お金が手に入るが、その運がなくなればお金を失う。それがこの世の常である。お金を手に入れることによって、欲望に目がくらみ、争うのではなく、ただ運と不運の人々の間をお金がめぐるだけなのだ。まさに金は天下のまわりモノという話である。

製作年 1996年
製作国 日本
配給 ケイエスエス
上映時間 80分
監督:黒沢清
脚本:黒沢清、塩田明彦
企画:伊藤靖浩、神野智
製作:須崎一夫
撮影:喜久村徳章
キャスト:哀川翔、前田耕陽、仁藤優子、河原崎建三、下元史朗、洞口依子、大杉漣

☆☆☆☆4
(カ)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

tag : ハードボイルド ☆☆☆☆4

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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