「たましいの場所」早川義夫 (ちくま文庫)

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早川義夫の歌は、なんだか悲しい。カッコ悪くて、みっともなくて、恥ずかしくて、不器用で、暗くて、自意識過剰で、いやらしくて、それでいてどこか胸に迫る。ずんとくるのだ。

歌は、悲しいから歌うのだと思っている。寂しいから、歌うのだ。人とは、違うから歌うのだ。何かが、欠けているから歌うのだ。もしも、楽しいのなら、もしも、幸せなら、満足しているなら、精神が健康ならば、なにも、わざわざ歌を作って人前で歌うことはない。すでにもう、日常で音楽が鳴り響いているのだから。それは、お腹いっぱいなのに、まだご飯を詰め込むのと似ている。

「五体満足なら、踊る必要はありません」は、『土方巽の方へ』を書いた種村季弘の言葉だ。(P251)


早川義夫とは、かつて幻のバンドと言われるジャックスで「サルビアの花」を歌い、休業して本屋さんをやっていたのだが、またソロで復活して音楽活動をしている。札幌でも歌いに来たので聴きに行ったことがある。良かったなぁ。そんな彼のエッセイ。ダメダメぶりがなかなかいい。本屋をしていた時も、人と話すのが面倒で引きこもっていたという。そうかと思うと、自分勝手に怒りだしたり、不機嫌だったり、女と遊んだり、スケベなことも大好きな自意識過剰なおじさんだ。だけど、そんなみっともない自分を抱えつつ、きらりと光る本当にたいせつな美しいものがわかる人だ。

「私はあの人が好きだ」と口に出してしまうと、そうでもなくなったり、「俺はあいつが嫌いだ」と書いてしまうと、そうでもなくなったりしてしまう。言えば楽になる。書けば楽になる。話すということ、書くということはそういうことなのだと思う。

本当のことは、言葉にならないかも知れない。言葉にした途端、すり抜けていってしまうのだ。本当らしいことは、どこにでも転がっているが、心に残るものは、形にならない。読み取らなきゃ、聴きとらなきゃ、つかめない。

歌番組に歌はない。音楽雑誌に音楽はない。詩集の中に詩などない。名言集の中に名言はない。たぶん、小説の中に小説はない。哲学書の中に哲学はない。詩は詩のないところに落ちている。歌は歌のないところから聴こえてくる。(P146)


言葉にすることで安心する。僕も映画のレビューなど、とりあえず見たことを言葉にしてみる。言葉にしながら、考えが整理される。発見もあったりする。ただ、言葉にすることで決着をつけたような気になる。それで忘れてしまったりもする。忘れないように言葉にするのだけれど、言葉にした途端、それで思考の外に追い出す。そんな感じがする。これで終わり。おしまい。

だけど、言葉にしたおかげで、またあとで読み直して、考えたりもするから、その作業は作業できっと大事なのだろうと思う。書くこと、話すこと。これをしないとモヤモヤが外にでていかない。外に出すことも大事だ。

それでも言葉に出来ないものを忘れてはいけない。言葉のできなかったこと。話せなかったこと。彼が言っているように、言葉に出来ないことほど、ほんとうのことだったりする。そのことも忘れてはいけない。

早川義夫は、歌を探し続ける人だ。本当に歌いたい歌を。うまく歌うのではなく、カッコつけて歌うのでもなく。歌は歌のないところから聴こえてくる。ほんとうに歌いたいこと。ほんとうに伝えたいこと。簡単には伝わらないけれど、ほんとうはどこかにある。それをみんな探している。

サルビアの花
この世で一番キレイなもの
グッバイ
アメンボの歌(桑田桑田佳祐 collaboration)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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    9,「エリックを探して」
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    3,「あぜ道のダンディ」
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