「恋の渦」大根仁

恋の渦
(C)2013 シネマ☆インパクト

映画comより。

山本政志監督がプロデュースする実践映画塾「シネマ☆インパクト」の第3弾で製作された5作品の1つ。『モテキ』(2011)でブレイクした大根仁監督の長編映画第2作。06年に上演された劇団ポツドールの三浦大輔による同名戯曲で、本音と嘘が入り混じった男女6人の恋をめぐる室内劇を映画化した。13年3月、「シネマ☆インパクト」第3弾のCプログラムとして上映され、大きな反響を呼んだことから、同年7月に単体の劇場公開作品としてレイトショー公開。


この映画は面白い。なんといっても役者の存在感に現代の若者そのものと感じられるリアリティがあるし、それをたった4つの部屋だけ、外ロケいっさいナシで描いてしまった「モテキ」の大根仁演出の巧みさと、演劇界のホープ三浦大輔の性愛と暴力が炸裂するくんずほぐれつの若者群像劇が見事だ。

僕が三浦大輔という名前を知ったのは、『演技者。』というフジテレビの深夜番組であった。若手の演劇関係者の世界観をジャニーズのタレントでテレビドラマ化するというもので、本谷有希子やケラリーノ・サンドロヴィッチや松尾スズキやマキノノゾミ、長塚圭史、赤堀雅秋、宮沢章夫、上田誠(ヨーロッパ企画)、前田司郎など錚々たるメンバーの演劇作品がドラマ化されていた。そのなかに劇団「ポツドール」の三浦大輔の名前があった。かなり激しい群像劇だった印象がある。その演劇作品の多くを『演技者。』で演出していたディレクターに大根仁がいた。その後、三浦大輔は「愛の渦」で第50回岸田國士戯曲賞を受賞し、大根仁は『モテキ』で大ブレイクした。三浦大輔はすでに『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(2010年)で映画デビューしているし、自作を監督した『愛の渦』は来年4月公開予定だ。劇団ポツドールの舞台は一度も観たことはないのだが、WOWOWかなにかで舞台を映像化したものを見たことがある。舞台上でカップルがセックスする場面もあり、こんな露骨な演劇もあるのかと驚いたものだ。

三浦大輔のテーマは性愛の群像劇が多い。人間の欲望や暴力や嘘や虚栄などが赤裸々に描かれるのだ。だから、彼の世界は醜い人間の現実を見せられるようで、少し気持ちが悪くなる。露悪的な不快感。未熟なみっともなさ。この映画もまさに、そんな未熟な若者たちの嘘と現実だ。

最初の場面、ある部屋に続々と集まってくる男女。会話が同時進行で入り乱れ、描写も複層的でその演出がうまい。一つの物語を進行させるのではなく、ゲームに興じる男女、男と女の出会いをからかう男たち、女子たちのトーク、孤立している女性などが描かれ、それが見事なテンポで展開される。

そして、時間経過が示され、その夜のそれぞれの部屋での3組のカップルと二人の男の部屋が映し出される。観客はようやくそれぞれのカップルの関係を知る。電話やメールがそれぞれの関係でやり取りされつつ、同時進行で物語が展開する。主人公的な人間がいるわけではなく、あくまでも群像劇なのだ。4組のカップルとある女にバカみたいに夢中になる男。そのぞれのカップルの関係の変化が時間経過とともに描かれる。それが、4つの部屋だけの撮影で展開されるのだ。夜のコンビニに買い物に行くのも、外の場面は描かれず、部屋で待つ男のみが描かれるのだ。

かなりの実験作であるにもかかわらず、会話にリアリティがあり、役者たちも有名な人が登場していないだけに、主役も脇役もなく、みんなが並列で均等なのだ。それが余計にどこにでもいそうな若者たちに見え、リアリティを増している。そんな未熟で他者に依存しがちで、孤独で虚栄心ばかり強い若者たちの<熱>が充満している映画だ。

製作年 2013年
製作国 日本
配給 シネマ☆インパクト
日本初公開 2013年3月30日
上映時間 140分
監督:大根仁
原作:三浦大輔
脚本:三浦大輔
制作:山本政志
撮影:大関泰幸、高木風太、大根仁
キャスト:新倉健太、若井尚子、柴田千紘、後藤ユウミ、松澤匠、上田祐揮、澤村大輔、圓谷健太、國武綾、鎌滝博秋、杉尾真理子、広瀬登紀江

☆☆☆☆4
(コ)
スポンサーサイト

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 青春 ☆☆☆☆4

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


twitter 719hideyosi

最新記事
お気に入り度
テレビドラマ「カルテット」
映画あいうえお順
カテゴリ
映画ジャンル&☆ランク
映画監督別
アキ・カウリスマキ
アラン・レネ
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
アルフレッド・ヒッチコック
アンドレイ・タルコフスキー
イエジー・スコリモフスキ
イザベル・コイシェ
ウェス・アンダーソン
ウディ・アレン
ヴィム・ヴェンダース
エドワード・ヤン
エミール・クストリッツァ
エリック・ロメール
オーソン・ウェルズ
ガス・ヴァン・サント
ギジェルモ・アリアガ
クエンティン・タランティーノ
クリント・イーストウッド
グザヴィエ・ドラン
コーエン兄弟
サム・ペキンパー
シドニー・ルメット
ジム・ジャームッシュ
ジャック・ロジエ
ジャン=リュック・ゴダール
ジョン・カサヴェテス
タヴィアーニ兄弟
ダルデンヌ兄弟
テオ・アンゲロプロス
テリー・ギリアム
ニキータ・ミハルコフ
ニコラス・レイ
パトリス・ル・コント
ハワード・ホークス
ビリー・ワイルダー
フェデリコ・フェリーニ
ファティ・アキン
フランソワ・オゾン
フランソワ・トリュフォー
ペドロ・アルモドバル
ポール・トーマス・アンダーソン
マイケル・ウィンターボトム
ミヒャエル・ハネケ
ラース・フォン・トリアー
ロバート・アルトマン
ロベール・ブレッソン
ロマン・ポランスキー

青山真治
今村昌平
犬童一心
石井裕也
大森立嗣
小津安二郎
北野武
宮藤官九郎
熊切和嘉
神代辰巳
黒沢清
是枝裕和
鈴木清順
園子温
成瀬巳喜男
西川美和
濱口竜介
深田晃司
藤田敏八
前田司郎
三木聡
山下敦弘
吉田喜重
読書感想・作家別
月別アーカイブ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
135位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
56位
アクセスランキングを見る>>
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
映画ベスト10 2009~2016年
2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
検索フォーム
ブックマーク
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
FC2カウンター