「映画に愛をこめて アメリカの夜」フランソワ・トリュフォー

アメリカの夜

「アメリカの夜」とは、カメラレンズにフィルターをかけて、夜のシーンを昼間に撮影すること。映画の嘘と魔術を愛をこめてトリュフォーが描いた映画。園子温が映画についての映画を撮っていたので、久しぶりにトリュフォーの映画についての映画を見たくなったのだ。

トリュフォー自身が監督役で出演しており、フランス・ニースのスタジオ“ラ・ビクトワール”を舞台に、「パメラを紹介します」という映画の撮影を行っているスタッフ・キャストたちの群像劇である。

トリュフォーの分身とも言われるジャン=ピエール・レオがわがままで女好きの子供みたいに未熟な俳優として出演している。映画ロケ中にいろんなことが起きる。ジャン=ピエール・レオの恋人がロケ中にスタントマンと失踪し、失意のままロケを逃げ出そうとする。そんな彼を引き止めようと彼と関係を持ってしまう相手役の女優ジャクリーン・ビセット。彼女自身も精神に不安を抱えており、この件で精神科医の夫とトラブルになる。そのほか台詞を覚えらない老女優(ヴァレンティナ・コルテーゼ)、小道具係と衣裳係がロケ中に男女の仲になったり、妊娠がばれちゃう新人女優などなど。ラストシーンは、役者が交通事故に会い、撮影が不可能になる。代役を使ってラストを変更しなければいけなくなるのだ。まさにトラブルの連続。それが映画だ。

クレーンの移動撮影で長いカットが何度も繰り返される。地下鉄の出口から上がってくるジャン=ピエール・レオと大勢のエキストラの微妙な動き、そしてバスや車のタイミング。それらのわずかな動きのズレで何度も撮影が繰り返される。映画を撮ることのスケール感の大きさが分かるシーンだ。あるいは、2階の窓越しの会話を撮影するための窓枠だけの美術セット。映画を作ることの大掛かりな嘘が愛情をこめて描かれている。スタッフや俳優たちの人物関係のドラマは、付け足しに過ぎない。スタッフと俳優が総がかりで巨大な嘘(虚構)を作り上げる面白さこそをトリュフォーは観客に見せたかったのだ。「ほら、映画作りって、嘘がいっぱいでしょ。そして、大人たちが悩みながら、みんなでその嘘を作り上げているんだよ。それが楽しいでしょ」って。そんな映画への愛は、何度かイメージが出てくるモノクロ映像に表れている。トリュフォー自身の子供時代、映画のスチル写真(『市民ケーン』)を深夜こっそり盗む場面だ。

多くの監督が映画の舞台裏を映画にしている。その描き方は様々だが、どれも映画愛に満ちている。この映画もそんな映画の嘘と魔術を愛している作品だ。



原題 La nuit americaine (Day for Night)
製作年 1973年
製作国 フランス・イタリア合作
上映時間 115分
製作:マルセル・ベルベール
監督・脚本:フランソワ・トリュフォー
脚本:シュザンヌ・シフマン、ジャン=ルイ・リシャール
撮影:ピエール=ウィリアム・グレン
美術:ダミアン・ランフランキ
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
キャスト:ジャクリーン・ビセット、ヴァレンティナ・コルテーゼ、ジャン=ピエール・レオ、ナタリー・バイ、フランソワ・トリュフォー、ニケ・アリギ、ジャン=ピエール・オーモン

☆☆☆☆4
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