『資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか』水野和夫、大澤真幸

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「不思議なキリスト教」や「おどろきの中国」などの対談モノが評判の社会学者の大澤真幸とエコノミスト水野和夫が、資本主義の成立の歴史から、その正体、さらに国家との関係、あるいは成長なき時代にあっても資本主義は可能なのか?そして「未来」について、二人が縦横無尽に語り合った本である。

水野和夫は「21世紀の利子革命」という言葉を使う。100年程度スパンで国債金利が急激に下がり、2%以下の超低金利が長期間続くことを意味する。そして現代はその真っ只中にあるというのが水野の指摘。10年を超えて低金利が続くと、既存の経済・社会ステムが維持できなくなるということだ。

16世紀イタリアのジェノバで、金利2%を下回る時代が11年続いた。その時代に、海洋貿易を通じて資本主義が世界システム化したと考えられ、ブローデルはこの時代を「長い16世紀」と呼んだ。現代は、その16世紀のジェノバの記録を日本が更新し、アメリカもドイツも先進五か国も2%以下の低金利時代が続いているのだ。

低金利時代とは投資機会がないこと。投資しても満足するようなリターンが得られなくなること。利潤率が低下し、企業が経済活動をしていくうえでの資本蓄積が出来ないということ。しかし一方で、投資機会が消滅するほど投資が行き渡ったとも言える。

資本主義の成立とは、「利子が天下国家の公認になった」ことだという。中世は時間の持ち主は「神」であり、時間に金利をつけるのはご法度だった。それが宗教革命で、公認となった。非合法下で高利貸しが活躍していた12~3世紀が、資本主義の下地を作ったのだ。

産業革命、動力革命を経て、「より速く、より遠くへ、より合理的に」を目指し、資本主義は発展していった。それでは、なぜ資本主義はヨーロッパで発展していったのか。マックス・ウェーバーが言うように、プロテスタントと資本主義の結びつきについての指摘。キリスト教は魂をコレクションして、資本主義はモノをコレクションする。天文学や造船技術の発展など航海技術の発達で、モノのコレクションが世界各地まで広がった。新大陸の発見、海外市場の開拓。モノの「蒐集」思想こそ資本主義だ。資本の覇権国はスペイン→オランダ→イギリス→アメリカと移っていった。それは「中心/周辺」「中心/地方」という関係を生み出す。

航海術は当時ヨーロッパより中国(明の時代)の方が発達していたと言われる。ではなぜ中国で資本主義は発達しなかったのか。中国では、遠方から財やサービスを持ってこなければいけないほどモノが不足していなかったのが一つの要因。では、イスラム教世界で発達しなかったのは?それは資本を蓄積する「法人」という概念をイスラム法が認めなかったからだというのが水野氏の考察だ。

大澤は、戦後を「理想の時代」、1970~95年を「虚構の時代」、95年以降を「不可能性の時代」と呼ぶ。「理想」とは市場拡大と高い利潤を得られた時代、「虚構」とは実体経済が伴はない繁栄で、ヴァーチャルな電子・金融空間を作り出してバブルとなった。そして、利子率上昇が「不可能」な時代が今なのだ。

では、グローバリゼーションが世界の隅々まで行き渡り、純投資がなくなる「ゼロ成長社会」で資本主義は可能なのか?「実物投資空間」がなくなり、無理に「電子・金融空間」を膨張させ、バブルを生み、バブル崩壊とデフレを3年に1度ぐらい繰り返す。新興市場や周辺があるうちはまだいいが、70億人が資本主義で覆われると、「周辺」がなくなり、蒐集は「過剰、飽満、過多」へと行き着く。蒐集すべきものがなくなってしまうのだ。

そうなると、働く人を貧しくすることでしか資本を維持できなくなる。資本は、国家・国民に離縁状を突き付け、自国民から略奪してまで利潤を上げようとする。非正規雇用、格差拡大。日本では、非正規社員が3割を超え、年収200万以下で働く人が給与所得者のうち23.7%(平成23年)。金融資産非保有世帯が26%(平成24年)。資本は、国家を超えていく。

希望なき時代の今、若者たちは「ほどほど幸せ」と思う。かつては「もっと豊かに幸福になれる」と思っていたから「今を不幸」だと感じていただけなのだ。未来に希望を持てていたからこそ、人は自分を賭けてチャレンジできた。資本主義は投資と回収の繰り返しで成長できたのだ。

現代は、希望なき「歴史の危機」のまっただ中であり、「未来の制度設計」をどうするのかが問われている。「ゴドー」はもう待っていてもやって来ない。「第三者の審級」(=超越論的他者「神」「父」「絶対的なアメリカ」)が撤退する「跡地」において、「未来の他者」をどう招き入れ、向き合うのか。われわれは、そういう新たな時代に突入しているのだ。

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