「遥かなる勝利へ」ニキータ・ミハルコフ

勝利へ

「太陽に灼かれて」(1994)「戦火のナージャ」(2010)に続いて3部作の完結編。ロシア革命の英雄から反革命の政治犯の汚名を着せられたコトフ大佐(ニキータ・ミハルコフ)の波乱に満ちた人生。彼の恋敵であり秘密警察でもあった因縁の相手ドミートリ(オレグ・メンシコフ)、そして愛する妻のマルーシャと愛娘ナーシャ(ナージャ・ミハルコフ)の物語がついに完結する。監督自らがコトフを演じ、実の娘にナーシャを演じさせたまさにニキータ・ミハルコフの集大成とも言える映画だ。

前2作を観ている以上、これは観ないわけにはいかないではないか。年末の多忙の中、何とか観てきた。
なんと言っても「太陽に灼かれて」は時代に翻弄される男と女、家族を描いた美しき傑作だった。
「太陽に灼かれて」レビュー

まだ小さくて可愛かったニキータ・ミハルコフの愛娘が成長して、看護師になって戦場で苦闘する姿を描いた「戦火のナージャ」。これでも映画は完結しなかった。
「戦火のナージャ」レビュー

そして「太陽に灼かれて」から19年の歳月をかけて完成させた完結編は、戦争映画大作であり、ヒューマンドラマとして十分見応えがある。ラストは「奇跡」が起きる。

冒頭の「蚊」の視点の描写から始まり、レコードの上のネズミなど、人間とともに生きるモノたちが描かれる。音楽は彼の映画にあっては欠かせない要素だ。いつものドミートリのピアノ演奏や戦場でのアコーディオンも効果的な使われる。空襲の戦火の中での奇跡の出産や愛妻に旅立たれた失意のコトフが出くわした駅前での結婚式の盛り上がりなど、どんな状況下でもヨロコビとともに生きる人間賛歌が躍動的に描かれる。そして、ラストのコトフと市民兵たちの戦場での奇跡と悲劇…。

映画の中で僕が一番面白いと思った場面は、死んだと家族に思われていたコトフが家に帰ってくる場面だ。コトフの姿を見て戸惑う親戚たち。元妻マルーシャの複雑な感情。赤ちゃんも生まれて家族とともに幸福に暮らす現実。そこに戻ってきた過去の亡霊。連れてきたドミートリが弾くピアノとともに、それぞれの感情が複雑に絡まり合い、とても興味深い再会のシーンになっている。単純にはいかない人生の皮肉。これこそ、ニキータ・ミハルコフの人間洞察だ。

「太陽に灼かれて」の後日談をなんとか終わらせないと決着がつかなかったのだろう。スターリン体制とともに戦争と時代に翻弄されてきた男とその家族の数奇な運命が、壮大なスケールで描かれている。ロシア的群像劇が得意なニキータ・ミハルコフの執念の3部作完結編だ。

原題 Utomlennye solntsem 2
製作年 2011年
製作国 ロシア
配給 コムストック・グループ、ツイン
上映時間 150分
監督:ニキータ・ミハルコフ
製作:ニキータ・ミハルコフ、レオニド・ベレシュチャギン
撮影:ウラジスラフ・オペリアンツ
美術:ウラジミール・アロニン
音楽:エドゥアルド・アルテミエフ
キャスト:ニキータ・ミハルコフ、オレグ・メンシコフ、ナージャ・ミハルコフ

☆☆☆☆4
(ハ)
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ジャンル : 映画

tag : 戦争

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