「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」ジム・ジャームッシュ

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この映画のことをなんと語ればいいのだろう。いつも通りクールでカッコイイ。こんなクールな吸血鬼、ジム・ジャームッシュでしか描けない。十分楽しめました。吸血鬼モノとしては、最近では『僕のエリ 200歳の少女』が美しく哀しき怪物の運命を描いていたけれど、このクールな吸血鬼アダムとイヴは、そんな哀しみさえ感じさせないエレガントさなのだ。
「僕のエリ 200歳の少女』レビュー

『ナルニア物語』でも氷のような「白の魔女」を演じているティルダ・スウィントンは、まさに美しき魔女の吸血鬼にピッタリだし、トム・ヒドルストンのアンダーグラウンドなロックミュージシャン吸血鬼もカッコイイ。サングラスと皮手袋、そして青白い顔。血のカクテルグラスを恍惚と飲み干す仕草や、赤く染まった牙のような歯。そして二人は体を寄せ合って眠る。何度も死と再生を繰り返すかのように。

デトロイトの夜が美しい。滅びゆく廃墟のような街。吸血鬼夫婦は夜のゴーストタウンをドライブする。その夜の流れる風景。あるいは、イヴはモロッコのタンジールの迷路のような路地を歩く。妖しく美しき路地の迷宮。この映画は、滅びゆく芸術や文化や街や物語への郷愁と愛なのか…。

エリザベス朝の戯曲家であるクリストファー・マーロウを名乗る吸血鬼作家(ジョン・ハート)は、ウィリアム・シェイクスピアの「ハムレット」の真の作者でもあるらしいし、そもそもアダムとイブという名前からして人類創世記の物語の名前なのだ。幾世紀もの時代を吸血鬼として生き延びてきたフィクションとしての男と女。アンダーグラウンドで葬送曲ロックを発表し続ける謎のミュージシャンのアダムは、かつてはシューベルトの曲も作ったというからお笑いだ。冗談のようなフィクションを生きた芸術を愛する吸血鬼たち。ミュージシャンのアダムは年代物のギターを愛し、妹エヴァ(ア・ワシコウスカ)が起こした騒ぎで壊れたギターを愛おしく眺めたりする。アナログ的な手触りこそ、愛してやまない気高き男。そもそも始まりは、レコード盤の回転だった。回り続ける幾世紀の間に、人間たちはゾンビのように破壊の限りを尽くし、水や血を汚していった。そして、選ばれし高貴な吸血鬼たちが、芸術を生みだし、文化を支え続けてきたという笑えるような倒錯した物語。

これは吸血鬼ものというスタイルを借りてきただけのジャームッシュの時代をめぐる旅なのかもしれない。愚かなゾンビたちによって失われつつある時代への愛を込めた音楽と文学の旅…。前作『リミッツ・オブ・コントロール』が殺し屋が世界の悪と戦うサスペンス風の衣をまとった空白の旅であったように。あるいは、『ブロークン・フラワーズ』は恋愛仕立ての過去への旅であったように。

「リミッツ・オブ・コントロール」レビュー
「ブロークン・フラワーズ」レビュー

アダムは木製の銃弾を用意する。自殺願望のあるロマンチストの吸血鬼。しかし、死ぬことなどできない。デトロイトの夜からモロッコのタンジールにたどり着いた二人は、現代の高貴な吸血鬼から再び過去の姿へと戻っていくのだ。

夜の2つの街がとにかく美しい。そこで死と再生のダンスを踊るかのような男と女の静かな旅を見て、愚かで騒がしきゾンビたちであるわれわれは何を思うのだろうか。


原題:Only Lovers Left Alive
製作年:2013年
製作国:アメリカ・イギリス・ドイツ合作
配給:ロングライド
上映時間:123分
監督:ジム・ジャームッシュ
製作:ジェレミー・トーマス、ラインハルト・ブルンディヒ
脚本:ジム・ジャームッシュ
撮影:ヨリック・ル・ソー
美術:マルコ・ビットナー・ロッサー
衣装:ビナ・ダイヘレル
編集:アフォンソ・ゴンサウベス
音楽:ジョゼフ・バン・ビセム
キャスト:トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン、ミア・ワシコウスカ、ジョン・ハート、アントン・イェルチン、ジェフリー・ライト

☆☆☆☆☆5
(オ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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