「ウルフ・オブ・ウォールストリート」マーティン・スコセッシ

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新人証券マンのディカプリオを先輩のマシュー・マコノヒ―がランチに誘って、証券マンの心得というかぶっ飛びアドバイスをするのだが、そこで突然、胸を叩きながら唸り出すのだ。一緒にやれと言いながら、二人で胸を叩きつつハミングする。これが映画の後半にも登場するのだが、精神を鼓舞するこの呪文のような音楽が何とも印象的だ。カリスマ経営者のディカプリオが証券社員たちを鼓舞するところが、この映画の肝だ。それはまるで集団催眠のような、体育会系の精神高揚術のようでもある。アドレナリンを出しまくりながら、金への欲望を刺激し、精神を鼓舞し、セックスとドラッグの欲望も総動員しながら、煽動していく。それは、潜在能力を引き出す時の人間の大きな側面を捉えている。それはある種、宗教的でもあり、祝祭的であり、スポーツ団体競技の試合前などでもよく使われる方法でもあり、ナチズム的な熱狂にもなる危うさだ。それはうまく使えば、自信を取り戻し、自らの眠れる力を引き出すことにもなるし、祝祭的儀式にもなるし、危険な方法で使われると集団的熱狂で冷静な自我を失う落とし穴にもなる。

この映画は徹底して下品で過激に欲望まみれの人間たちを描いている。強欲資本主義の狂乱。性とドラッグが過剰に氾濫し、「Fuck」という単語は506回使われたらしい。女性はほとんど性的欲望の対象としてしか描かれていないし、登場人物たちに感情移入出来るタイプの映画でもない。だから、この映画に眉をひそめる良識派の人たちもいるだろう。ほんと、下品な映画だ。だけどこの下品さや破廉恥さもまた我々なのだ。そのことをモラルや常識を超えて、いい悪いや批判ではなく、徹底して描いている老齢のベテラン監督マーティン・スコセッシはアッパレである。

映画はテンポよくどんどん進むかと思いきや、ときどきじっくりと時間を使って人物を描き出す。刺激の過剰さと時間の停滞のバランスが絶妙なのだ。まぁ、ウルフがウルフであり続けるために走り続ける男性映画である。これを現代の草食系男子はどう観るのだろう。あるいはアメリカで貧困格差であえぐ人々は何を感じるのだろう。金がバブルにまみれて氾濫した最後の幸福な時代、資本主義の最後のアダ花、狂乱そのもののような映画でもある。

原題 The Wolf of Wall Street
製作年 2013年
製作国 アメリカ
配給 パラマウント
上映時間 179分
監督:マーティン・スコセッシ
製作:マーティン・スコセッシ、レオナルド・ディカプリオ、リザ・アジズ、ジョーイ・マクファーランド、エマ・コスコフ
原作:ジョーダン・ベルフォート
脚本:テレンス・ウィンター
撮影:ロドリゴ・プリエト
美術:ボブ・ショウ
衣装:サンディ・パウエル
キャスト:レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マーゴット・ロビー、マシュー・マコノヒー、ジョン・ファブロー、カイル・チャンドラー、ロブ・ライナー、ジャン・デュジャルダン

☆☆☆☆4
(ウ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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