「そこのみにて光り輝く」呉美保

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好きな映画だ。そしていい映画だ。また一つ、函館を舞台にした佳作が誕生した。雰囲気はちょっとひと時代前の感じ。テレビドラマの『傷だらけの天使』とか『真夜中のカーボーイ』とか『スケアクロウ』とか。最近では青山真治の『共喰い』があったが、同じ菅田将暉くんが出ているのも興味深い。

土地から動くことも出来ない人間たち。都会にも行けず、地面を這いつくばるように生きている人々。うらぶれた地方都市、函館は、いつもの夜景の俯瞰や元町の坂道や教会や赤れんが倉庫群も市電も出てこない。観光地としての函館ではなく、どこにでもあるさびれた地方都市。それは同じ函館市民映画第1弾の『海炭市叙景』とも同じだ。まぁ、原作が同じ佐藤泰志なのだからトーンが似るのも当然なのだが。函館の風景は、海辺のバラックや小さなスナックばかりあるネオン街、そしてパチンコ屋にアパートに路地だ。オシャレなところが一つも出てこない。この地面を這いつくばるようにバラックやボロアパートの片隅で生きている者たちが浄化されるのは海の水であり、太陽の美しき光だ。ポスタービジュアルに使われている光を浴びた痣だらけの池脇千鶴の美しさを見よ。傷だらけ、痣だらけの男と女。海の水のなかで愛し合い、オレンジ色の光で浄化されるかのように、その姿がまぶしい。

3人の役者たちがいい。老いた色ボケの父の世話をする池脇千鶴の哀しき眼差しや剥き出しの手足。綾野剛の背中の傷や伏し目がちな視線。そして菅田将暉の金髪の結んだ髪や血走った憎悪の眼、そして過剰なおしゃべり。痛みや苦しみを抱えながらなんとか前を向いて生きていこうとする。だけどうまくいかないもどかしさ。菅田将暉のまっすぐな行動がお決まりの狂言回しに使われるのはわかっていても、やっぱりせつない。タイトな画面が多く、カメラはあまりロングはない。どちらかというと3人の苦しい息遣いが聞こえるほど近くに寄り添っている。その息苦しさが、せつなく重い。

池脇千鶴は『ジョゼと虎と魚たち』という恋愛映画の傑作があったけど、この映画も彼女の代表作になると思う。長回しの性描写もリアリティがあって観ていて引き込まれる。そして最近ちょっとテレビでも出過ぎの感がある綾野剛。この映画はナイーブな投げやりな感じの彼の良さがとてもよく出ている作品だ。そして、ちょっと頭の軽いイカレているけれど、気持ちのまっすぐな男を演じている菅田将暉が凄くいい。『共喰い』とは全く違う役で、これからがとても楽しみな役者だ。もちろんロマンポルノ時代が懐かしい伊佐山ひろ子に、白眼の火野正平、高橋和也など脇役もいい。

夏になっても咲いている紫陽花、百円ライター、自転車、イカ工場から漂ってくるような生臭い臭い、そして地方の小さな祭り、どれもが効果的だ。

やや重く、最近はやりの軽いテンポのある感じの映画でないが、地に足の着いた人間がちゃんと描かれているいい映画だと思う。大袈裟でわざとらしい映画ばかりではなく、こういう静かでささやかな映画が僕はやっぱり好きだ。

原作「そこのみにて光輝く」佐藤泰志レビュー

製作年 2014年
製作国 日本
配給 東京テアトル
上映時間 120分
監督:呉美保
企画:菅原和博
製作:永田守、菅原和博
原作:佐藤泰志
脚本:高田亮
撮影:近藤龍人
照明:藤井勇
音楽:田中拓人
キャスト:綾野剛 池脇千鶴 菅田将暉 高橋和也 火野正平 伊佐山ひろ子 田村泰二郎

☆☆☆☆☆5
(ソ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 青春 ☆☆☆☆☆5

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初めまして

初めてコメントさせていただきます。僕も自身のブログで映画レビューなどを書いております。「そこのみにて光輝く」僕も観ました。いい作品だなぁ、とおもいます。適切な長回し、手持ちと固定カメラの使い分け、イカ工場のにおいまで漂ってきそうな雰囲気。よく表現された作品だと思いました。

コメントありがとうございます。

「そこのみにて光輝く」は、いい作品でした。昭和の感傷とも言うべき懐かしさが映画にはあります。それはやはり原作者の佐藤泰志によるところが大きいのだと思います。池脇千鶴の太い脚を腕が何ともリアルで存在感がありました。カワイイだけの女優とは一味違う存在になりました。
プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


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