「WOOD JOB!神去りなあなあ日常」 矢口史靖

Wood job

さすが矢口史靖監督。三浦しをんの原作を一味違った味付けで、前代未聞の林業青春ムービーに仕立て上げた。自主映画出身の矢口史靖監督らしい映像工夫も随所にあり、編集のテンポがとにかくいい。ヤギやマウンティングする犬、お尻に引っ付くヒルや鹿の死骸。原作を読んだ時から、あの祭りのラストをどうやって映画化するの?と興味津々だったが、映画なりの工夫がお見事で大笑いしてしまいました。原作読んでからでも十分楽しめますよ!

最初の都会のパートのところでは、染谷将太の体にアームでカメラを取りつけ、彼だけ動かずに周りが動く不思議な映像作りをやっていたし、大地の緑が生えてくるコマドリ撮影は圧倒的に生々しく生命力に溢れていた。役者たちも、染谷将太だけではなく、長澤まさみ、伊藤英明、優香、西田尚美、マキタスポーツなど役者の誰もが生き生きとしていて存在感があったし、子供たちや年寄りたちの自然さも素晴らしかった。光石研と柄本明はこのところどんな映画にも出ていて、さすがに出過ぎだろうという感じもあるが、いつもながらの安定した存在感だ。進境著しい染谷将太は、いつもと違うとぼけた笑いを誘うし、伊藤英明の野性味もまさにハマり役。女優陣も、西田尚美はいつもの芸達者ぶりだけど、長澤まさみや優香がサバサバしていて予想以上に良かったなぁ。

木が倒れる迫力と飛び散る木くず、そして木の上に昇るその高さ。役者にそのまま作業をやらせ、演じさせたという監督の熱意がしっかり伝わってくる。

原作にもある山への感謝や神が宿る畏敬の念、今でもこういう感覚が残っていることに日本人として誇らしく思います。林業がもっている時間の数百年、数千年というスケールの大きさ。私たちは自然から与えられた山を預かって管理しているに過ぎないという感覚。自分だけの損得や、自分の生きている間のことではなく、次の世代へとつなぐ大きな視野での時間感覚には、感銘を受ける。古来からの山人としての日本人の自然観が引き継がれていることが感慨深い。

今まで誰も描かなかった林業の世界を娯楽映画として成立させた意義はとても大きい。同じTBS映画「銀の匙」は、命と酪農業への感謝が感じられる食育青春ムービーだったが、こういう地域に根差した自然とのかかわりこそ、今見直されている時代なのだとあらためて感じる。

山の神を描いた映画として、中上健次原作・脚本で映画化した柳町光男監督の「火まつり」があったが、あの神話的映画とは全く違う誰もが楽しめるエンタテインメント青春ムービーだ。ラストの祭りがまたいいんです。自然と人間、男と女、祝祭、地域とのつながり…。シンプルに大切なことが詰まってます。


製作年 2014年
製作国 日本
配給 東宝
監督:矢口史靖
エグゼクティブ・プロデューサー:濱名一哉、藤巻直哉
原作:三浦しをん
脚本:矢口史靖
脚本協力:矢口純子
撮影:芦澤明子
照明:永田英則
美術:花谷秀文
音楽プロデューサー:和田亨
音楽:野村卓史
主題歌:マイア・ヒラサワ
キャスト:染谷将太、長澤まさみ、伊藤英明、優香、西田尚美、マキタスポーツ、有福正志、近藤芳正、光石研、柄本明

☆☆☆☆4
(ウ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 青春 ☆☆☆☆4

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No title

矢口監督は僕を映画に引きずり込んだ監督さんなのです。20年間ほど映画館に行った記憶が無かったのですが「スウィングガールズ」の予告編を見て劇場に足を運んだのが運のつき。結局大ハマりしてしまい「スウィングガールズ」を14回、劇場で観ました。それ以来映画そのもののファンになってしまい、今に至っています。矢口監督に感謝です。

のぶりんさん

8ミリ映画出身の矢口史靖監督の軽快さについては定評がありますね。特に若い人たちの青春群像劇はうまい。出世作の「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」を見ればわかりますね。くどくど考えるようなものではなく、躍動感あるリズムが彼の映画の真骨頂です。「ロボジー」や「ハッピーフライト」などの商業エンタメ映画が続いていますが、この林業映画は彼の新たな境地を開拓した映画と言えるでしょう。
プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


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