「だから日本はズレている」古市憲寿

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古市はいつだってクールである。熱くならずに淡々と現実を見つめている。それがなんだかイライラもするけれど、なかなか的を得ていて面白い。本書はなかなか笑えるところが多い。なるほどなぁ~と自分たちを含めた「オジサン」の「ズレ」を皮肉っている。アイロニーである。決して彼は怒ってはいない。強い主張をしているわけでもない。どうしてオジサンって、こんなことばかり言うの?と不思議がっている感じだ。その違和感を古市は指摘し続ける。

「リーダー」なんていらない/「クール・ジャパン」を誰も知らない/「ポエム」じゃ国は変えられない/「テクノロジー」だけで未来は来ない/「ソーシャル」に期待しすぎるな/「就活カースト」からは逃れられない/「新社会人」の悪口を言うな/「ノマド」とはただの脱サラである/やっぱり「学歴」は大切だ/「若者」に社会は変えられない/闘わなくても「革命」は起こせる/このままでは「2040年の日本」はこうなる......    [本書帯より]

彼は決して「若者」代表ではない。だけど「オジサン」よりも「若者」に近い。そして誰もが言うところの「若者」なんてどこにもいない。

「物心ついた頃にはバブルも終わっていて、多感な青春時代には平成不況のニュースばかり。今の20代以下は、日本が元気だった頃を知りません。現在の生活に満足しているけれど、将来に不安もある。身近な世界の中で仲間と価値観を大切にする感性が広がっています。社会学ではコンサマトリーって言うんですけどね」と、古市は求められるままに何度も同じ言葉を繰り返したという。そう、社会が求める物語=ストーリーとしての「若者像」だ。それが単なるストーリーであることを彼はよくわかっている。そんな風に単純なものじゃないと。

だから彼を頭がいい。幻想(物語)に囚われない冷静さを持っている。一方で、この冷め方がやっぱり物足りない。彼の希望はどんな社会なのか、夢を語らない。少しでも楽しくて居心地のいい小さな世界を望んでいるだけで、大きな望みはないかのようだ。大きな物語などもう必要ないと彼は思っているのかもしれない。

肯定的に表現されているのは、「ダウンシフターズ(減速生活者)」という「今、ここ」にある身近な幸せを大切にする「コンサマトリー(自己充足的)」という概念を実践する人々であり、そんな彼らの戦うのではなく降りる「やさしい革命」だ。

最後の章で彼が皮肉を込めて描く「2040年の日本」は、幸福な階級社会だ。それを言いとも悪いとも言わない。あくまでも彼の現在から想像する未来図であり、そこには皮肉が込められている。なるほどと思いつつ、なんだか嫌な未来図だ。社会は「革命」や「デモ」でも、ましてや「強いリーダー」でも簡単には変わらない。そこまで社会は複雑化しているからだ。その通りだと思う。それでも「問題」を先送りせずに、よりマシに変えようとする行動や努力は必要なはずだ。物足りないけれど、笑いながら軽く読める本だ。

古市は「おわりに」で書く。

人は、今いる場所を疑わなくなった瞬間に誰もが「おじさん」になる。
「おじさん」は、「今ここにないもの」に過剰に期待してしまい、「今ここにあるもの」に潜んであるはずの様々な可能性を見過ごしてしまっているのだ。
もし本当にこの社会を変えたいのならば、「おじさん」自身から変わらなければならない。しかし疑うことを忘れた「おじさん」に、そんなことはできない。
「おじさん」たちの世界のことを考察することで、なぜ「おじさん」たちが「若者」に興味を持ってくれるのかもわかった。「おじさん」とは自分たちの価値観を疑わない人たちなのである。だけど同時に、自分たちを変えてくれる存在を待っている人たちでもあるのだ。「おじさん」たちは「若者」に倒されるのを、待っているのかも知れない。



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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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