「グランド・ブタペスト・ホテル」ウェス・アンダーソン

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映画を作る喜びに満ちた幸福な映画である。映画のどのワンカットを切り出しても、ウェス・アンダーソンの特徴のある映像である。その構図、色調、衣裳、セット、小道具に至るまで細部まで計算され尽くし、凝りに凝っていて楽しいのだ。だから画面から目が離せない。字幕を読む暇もないくらいだ。展開もテンポよくどんどん進んでいく。僕はついつい2度も映画を観てしまった。それぐらい見応えがあるし、何度観てもきっと楽しい映画だ。

ウェス・アンダーソンの前後、左右、上下のいつものカメラワークは健在だ。冒頭、一人の少女とともに壁を越えて、カメラは右から左に少女の歩きとともに墓地を移動する。ベンチに座る人々が一瞬映し出される可笑しさ。そしてある作家の銅像に導かれる。少女が手に持つ本。そして作家のオンカメの語り。そらに少年のイタズラがその語りを中断させる。こんな風に随所に遊びを散りばめつつ、物語の展開と画面はどんどん進んでいく。カメラは右から左、左から右、さらに下から上、上から下、そして画面の手前から奥、奥から手前へと移動し、登場人物たちもカメラとともに前後左右、上下、手前から奥へと移動し続ける。その運動そのものの楽しさ。時には、エレベーターでの移動の中で出会いたくない人物たちが乗り合わせ、あるいは横移動の列車の中での出会い、さらにはホテルの上から下への落下。登場人物たちは、まさに画面を縦横無尽に走り回り、動き回り、逃げ回るのだ。その追跡と逃走の運動のドラマ。それはまるで無声映画の活劇のようだ。まさに運動とスペクタクルである。ホテルオーナー同士の秘密結社のような逃走を手引きするつながりも楽しい。移動することの運動に映画の原初的な面白さがあるのだ。人が出会い、別れ、また別の人と出会い、そのドラマと空間から空間へ移動するアクション。シンメトリーな縦構図と横構図の人工的な空間。その虚構性こそ、映画の夢でもあるのかもしれない。

そして、色、衣裳、セットなど美術の素晴らしさも存分に堪能できる。さらに演じる役者たちの楽しそうなこと。画面に登場する豪華キャストたちは、存分にその特異なキャラクターを楽しんでいるのだ。

さらにピンクのかわいらしい色の奥に隠れている全体主義の闇もしっかり描いている。このへんはこれまでのウェス・アンダーソン監督作品の中でも一歩踏み込んだ映画になっている。とにかくキュートでチャーミングな映画である。これこそ映画作りへの愛と楽しさが感じられる映画である。

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原題 The Grand Budapest Hotel
製作年 2014年
製作国 アメリカ
配給 20世紀フォックス映画
上映時間 100分
監督:ウェス・アンダーソン
製作:ウェス・アンダーソン、スコット・ルーディン、スティーブン・レイルズ、ジェレミー・ドーソン
製作総指揮:モリー・クーパー、チャーリー・ウォーケン、クリストフ・フィッサー、ヘニング・モルフェンター
原案:ウェス・アンダーソン、ヒューゴ・ギネス
脚本:ウェス・アンダーソン
撮影:ロバート・イェーマン
美術:アダム・ストックハウゼン
衣装:ミレーナ・カノネロ
編集:バーニー・ピリング
音楽:アレクサンドル・デプラ
音楽監修:ランドール・ポスター
キャスト:レイフ・ファインズ、F・マーレイ・エイブラハム、マチュー・アマルリック、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、
ジェフ・ゴールドブラム、ハーベイ・カイテル、ジュード・ロウ、ビル・マーレイ、エドワード・ノートン、シアーシャ・ローナン、
ジェイソン・シュワルツマン、レア・セドゥー、ティルダ・スウィントン、トム・ウィルキンソン、オーウェン・ウィルソン、トニー・レボロリ

☆☆☆☆☆5
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
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