「クスクス粒の秘密」アブデラティフ・ケシシュ

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カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作「アデル、ブルーは熱い色」(2013)のアブデラティフ・ケシシュ監督の2007年作品。チュニジア系フランス人家族が船上レストラン開店に向け四苦八苦する話。そのレストランの目玉料理がクスクス。クスクスとはチュニジアの伝統料理でアラブ系社会ではよく食べられているもの。この主人公スリマール(アビブ・ブファール)の家族たちが集まって、母の手料理クスクスを「うまい!うまい!」と食べるシーンがある。それぞれの顔をアップで多用し、時にはカメラを振り回してパンしたり、リアルな家族たちの食事風景が描かれている。それはまるで、カサヴェテスの映画のようだ。ドキュメンタリー的手法とも言うべきワンカメによる撮影。カメラ位置を変えて何度もリハーサル重ねて撮影するお芝居とは違うリアリティある臨場感が映像から感じられる。

この映画はフランスの港湾労働者のアラブ系移民家族の物語だ。35年も働いてきたスリマールは、労働時間を極端に減らされ、人件費削減のため首切り同然の仕打ちを受ける。そんな男が元妻の得意料理クスクスを目玉に、アラブ移民が集まる船上レストランを作ろうと動き出す。そんなスリマールに協力するのは、現在の恋人の娘リム。銀行や市役所、保健所などをまわるが、なかなか相手にされない。最後に、町の有力者を集めて船上パーティーを開くのだが、そこで思わぬトラブルが起きる。完成したクスクスの鍋が、どこかへ消えてしまったのだ・・・。

映画のテンポはまったりとしている。テンポよく場面が展開して、物語が進んでいくのではなく、カメラの撮り方同様、場面転換もドキュメンタリー的だ。家族の会話も、料理の準備も、鍋がなくなるところも、その時間を埋めるためにリムがお客の前でベリーダンスを踊る場面も、実時間に近いように長く延々とその場面が描かれる。テンポの良い編集、場面転換で、困難な状況を描くのではなく、じっくりとリムはお客の前で腰をふり、セクシーに体をくねらせ、延々と踊り、延々と音楽隊の演奏が続けられる。客たちには酒が配られ続け、いつまでも給仕されないクスクス料理の待つ時間が長々と描かれる。鍋を探しに行ったスリマールは、今度は町の不良少年たちにバイクを盗まれ、無駄に走りまわる羽目になる始末。何も問題は解決しないまま、ズルズルと時間ばかりが過ぎていくのだ。そして映画はそのまま終わってしまう。何も解決されないまま。

そのマッタリ感がこの映画の特徴だ。物語が展開しないのだ。停滞し続ける。それがなんだかドキドキする。アブデラティフ・ケシシュ監督の策略が見事に奇妙な凝縮した時間を描くことに成功している。そしてままならぬ人生の停滞の時間が描かれるのだ。何も解決されぬままに。

アラブ系移民の特徴なのか、女性がイライラと激しく、ヒステリックに描かれている。「言われているだけじゃダメよ。言い返さないと…」という感じで戦闘的なのだ。スリマールの元妻とその娘たちと、今の恋人とその娘との女たち同士の確執が描かれるが、なかなか激しいのだ。そして主人公であるスリマールは、あまり何も言わない。女たちはさらに文句が増していく。さらに、息子たちはいやらしい目で、恋人の娘リムのことを見つめ、普段から浮気性でロクでもない。妻たちはいつも不満を募らせ、男たちがパッとしないのだ。そんな男女の描写が印象的だ。


原題:La graine et le mulet
製作年:2007年
製作国:フランス
上映時間:135分
監督:アブデラティフ・ケシシュ
キャスト:アビブ・ブファール、アフシア・エルジ、ファリダ・バンケタッシュ

☆☆☆☆4
(ク)
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テーマ : TVで見た映画
ジャンル : 映画

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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