「愛と暴力の戦後とその後」赤坂真理(講談社現代新書)

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「東京プリズン」が読み応えるある小説だったので、こちらも読んでみたが、こちらはどちらかというとエッセイ的に思いめぐらしたことをいろいろと書き散らした内容。1964年生まれの女性が、アメリカへ行って日本のことを問われて、日本のこと、日本の宗教観、天皇制のこと、天皇と戦争責任のことなど、何も語れなかった自分の経験をもとに、あらためて考えた「日本」をめぐる疑問について、調べ、考え、等身大で思いめぐらした本だ。研究者ではないので決して深い内容ではない。学校でも誰も教えてくれなかった日本の近現代史の歴史分析がされているわけでもない。どちらかというと作家の直観で書かれている。だから、なるほどと思うところもあれば、ちょっと短絡的じゃない?と思うところもある。何も知らなかった一人の女性が、「日本語のこと」、「戦後に消えた空き地とガキ大将のこと」、「安保闘争と学生運動への疑問」、「オウムとは」、「閉塞感の正体」、「憲法について」など、素朴な疑問として日本の戦後を考えている。

日本人はすぐに忘れてしまう。あるいは何も考えていない。だから日本は何も変わっていない。

江戸時代から明治への大転換。我々はもう江戸時代を忘れている。そして急ごしらえで作られた近代国家。突貫工事で近代国家の体裁を整え、大日本帝国憲法は作られた。「国民」は、天皇の赤子、「臣民」になった。そもそも漢字(チャイニーズ・キャラクター)だって中国から輸入されたものだということさえ忘れてしまっている。「憲法」という言葉をはじめ、明治に輸入され翻訳された言葉もたくさんある。そして、戦争と敗戦。現人神の幻想は架空のものだったとされ、鬼畜米英は優しき憧れの隣人になった。

赤坂真理は、ジョン・ダワーが書いた「占領期の日本には何か性的な匂いがした」(『敗北を抱きしめて』より)という文章に引っかかる。占領期の日本とは、来る者への「お・も・て・な・し」だったのではないか。東京オリンピック誘致に使われたあの言葉。在日米軍の「おもいやり予算」という気持ち悪いネーミングにもつながる。

私たちは、私たち自身を一度完膚なきまでに叩きのめし鬼畜とさえ思った相手に打って変わって優しくされたことで、彼らを愛してしまい、彼らもまた、気持ちよくしてもらったことが忘れられずに、私たちを手放さない。(P273)


震災後、日本は世界に類のない「まったく新しい物語」を提示できるのではないかと思っていたという。「敵味方や、加害や被害の物語によらない物語」。「戦後」や経済成長という物語が終わってしまったあとに。しかし、「物語そのもの」に対する疑念が生まれてきて、書けなくなってしまったという。

人は自己の拠って立つ物語がなければ生きにくい。けれど、人は、物語に縛られ、逆に物語に操られてしまう存在である。世界の宗教の歴史はそれを教えていないだろうか。物語のつくりかたは、神のつくりかたに似ている。神とは、物語、フィクションの最たるものなのかもしれない。(P278)


明治国家の天皇の使い方は、天皇が権力を持ちながら、最終的に免責されるようにできていた。天皇=国体であり、システムだったが、責任を持つべき者が免責されているのだから、暴力の、天井も、底もない。すべては現場の裁量になり、「空気」と同調圧力が支配する。それは現代も通じる。特定の時代の天皇を利用したシステムが悪かったというより、日本人集団のある種の自然な性向のために、天皇は利用されたのであり、「戦後」の内向きの暴力はセットされていたのではないか、と学生運動の内ゲバや三島の自殺、学校のいじめ問題までも赤坂は重ねて語る。行き場のない暴力。行き場がなくても、暴力はある。いい悪いではなく。だから誰も責任をとらないし、うやむやに忘れ去られ、なかったことのようにされてしまう。

物語は、暴力性をはらんでいる。マジョリティとマイノリティを作り出し、敵と味方を作り出す。しかし、弱者にとってこその、「逆転した暴力性を持たない物語」はないのだろうか?一人一人バラバラで統一されない、人が生きていくのに、切実に必要される物語が。赤坂はきっと、そんな物語を小説家として今後、紡いでいくのだろう。
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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    5、「きっと ここが帰る場所」
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    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
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    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
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    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
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    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
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2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
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    8、ロルナの祈り
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<日本映画>
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