「3人のアンヌ」ホン・サンス

韓国の映画界にあってまさに異色なホン・サンス。まるで韓国映画らしくない。激しい情念の映画ではない。そう、これはフランス・ヌーヴェルヴァーグだ。まさにエリック・ロメールの映画そのものだ。ホン・サンスこそはエリック・ロメールの正当たる後継者だ。
繰り返される海辺のバカンスの恋愛話。この映画では、同じキャストが海辺のペンションを舞台にしたいくつかの男女の物語を演じる。アンヌという名前の3人人の女性を同じイザベル・ユペールが演じる。成功したフランスの映画監督、恋人に会いに来る浮気中の人妻、そして離婚したばかりの女性。彼女にちょっかいを出す韓国人男性と妊娠中の妻。あるいは海辺の若きライフガード。有名な映画監督。それぞれがそれぞれのシチュエーションでフランス人女性アンヌと絡み合う。同じように繰り返される台詞。愛と嫉妬。若き肉体への欲望。言葉の壁を越えたコミュニケーション。さびれた海辺で繰り返される男と女のすれ違いや恋物語。海辺のペンペンションという場所が、さまざまな物語を生む。その男や女たちのささやかな心のさざ波がなんとも愛おしくなる映画だ。
あっ、ライフガードが海を横切るように泳ぎ、それを浜辺のアンヌが見詰めている場面、僕はつげ義春の「海辺の叙景」を思い出す。さすがにホン・サンス、つげ義春は読んでいないよなぁ。
原題:In Another Country
製作年:2012年
製作国:韓国
配給:ビターズ・エンド
監督:ホン・サンス
脚本:ホン・サンス
撮影:パク・ホンニョル、チ・ユルジョン
編集:ハム・ソンウォン
キャス:イザベル・ユペール、ユ・ジュンサン、チョン・ユミ、ユン・ヨジュン、ムン・ソリ、クォン・ヘヒョ、ムン・ソングン
☆☆☆☆4
(サ)
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