「百円の恋」武正晴

百円

頑張る女性におススメだ。いやもちろん頑張る男性にも。「いたいいたいいたいいたい」とクリープハイプが主題歌を歌うように「いたい映画」だ。肉体的にも精神的にもボコボコ状態。負け犬そのもののような女、一子(安藤サクラ)が素晴らしい。前半のぐうたらな肉体。ぶよぶよに太ってだらしない肉体をさらけ出し、メチャクチャな姉妹喧嘩をし、仕事も、男(新井浩文)も、いいところまったくなしの現実。そのダメダメぶりがなんともいい。笑いを誘いつつ、笑うほどのどうしようもない現実。誰にでも経験のあることだ。

だから後半の開き直りのボクシング練習シーンは、予想通りの展開ながら、気持ちがいい。一緒に体を動かしたくなるほどだ。彼女の軽やかなステップ、身をかわし繰り出す左右のパンチ、縄跳び、彼女の鍛え上げられる肉体に観客は同化していく。まさに安藤サクラの肉体の映画だ。彼女の肉体そのものが映画になっているのだ。だからボクシングでボコボコにされる場面は、いたいのだ。その痛みは生きていることそのものの痛みだ。うまくいかない現実、うまくいかない男女関係、うまくいかない人間関係、ろくでもないやつらやろくでもない自分。すべてがボコボコにされる。いたい。

映画はその痛さを肉体的に感じられるように描いている。だから決していいことなど簡単には起こらない。現実は甘くない。「ボクシングを甘く見るなよ」というボクシングジムのオヤジがいい。簡単に彼女を認めない。現実は映画のようにうまくはいかないのだ。そのことをしっかり描いているのが好ましい。

ボクシングやレスリングのような肉体を感じる映画って、やっぱりせつない名作が多いよなぁ。ミッキー・ロークの「レスラー」は好きだ。このテの映画って、ダメな人間の話が多いんだよな。ロバート・アルドリッチの遺作「カリフォルニア・ドールズ」もドサ廻り女子プロレスのいい映画だった。もちろん、クリント・イーストウッドの「ミリオンダラー・ベイビー」も忘れてはならない。アイルランド移民の社会の過酷さを深い人間ドラマとして描いている。これも女性ボクサーの話でした。

「レスラー」レビュー
「カリフォルニア・ドールズ」レビュー

この「百円の恋」が頑張る女性を描いているのも今の時代の特徴だ。今は女性がドラマになるのだ。安藤サクラは「0.5ミリ」も話題作(未見)で、次々と問題作に出演しているし、本当にいい女優だ。

2012年に新設された脚本賞「松田優作賞」第1回グランプリを受賞した足立紳の脚本を、「イン・ザ・ヒーロー」の武正晴監督のメガホンで映画化した。足立紳、武正晴など若い才能の今後に期待したい。


製作年::2014年
製作国:日本
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
監督:武正晴
脚本:足立紳
製作:間宮登良松
企画監修:黒澤満
音楽プロデューサー:津島玄一
撮影:西村博光
美術:将多
音楽:海田庄吾
主題歌:クリープハイプ
キャスト:安藤サクラ、新井浩文、稲川実代子、早織、宇野祥平、坂田聡、沖田裕樹、吉村界人、松浦慎一郎、伊藤洋三郎、重松収、根岸季衣

☆☆☆☆4
(ヒ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 青春 ☆☆☆☆4

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非公開コメント

No title

リアリティがありそうですね
日常の男女にありそうな雰囲気
なんとなくそういうものを感じます

だからこそ共感する人も多そうですね^^

Re: No title

>ヒロタロウさん
コメントのありがとうございます。
安藤サクラ演じる一子のダメさ加減は、誰でも共感できます。そして、恋する男に冷たくされることも誰でもあります。そのときの「くそーっ」ていう感じが共感できる映画です。
プロフィール

Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

Author:Yasuo K  ( ヒデヨシ)
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


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