「小暮荘物語」三浦しをん (祥伝社文庫)

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オンボロアパート木暮荘を舞台にした住人を含む周辺の人たちの群像劇だ。性がそれぞれテーマになっている物語だが、不思議なことが時々起きる。その不思議さは、死に結びついている。

坂田繭と伊藤晃生の若いカップルに突然、繭の元カレの並木がふらりと戻ってきて奇妙な3人の同居生活が始まる。繭としかセックスを経験していない並木は、自分勝手に世界を放浪し、繭が待っていると思って戻ってきた。ほったらかしにされていた繭は新しい彼氏を作っていた。セックスを介在させない3人の距離感が面白い。一方、管理人の爺さん木暮は、無性に「セックスがしたい」と渇望し、風俗の女性を部屋に呼ぶ。年老いた友の死とともに突然渇望する性。もうすぐ死ぬからこそ、生きる実感を味わうためにセックスがしたくなるのか。

小田急線の駅のホームの柱に男根のような奇妙な水色の突起物に気づくトリマーの美禰。誰もその突起物に驚かないのに、あるヤクザの男だけが気づく。美禰とヤクザの男の共通点とは、「人を殺したことがある」ということ。人を殺したことがある者だけに見える男根の突起物。ここでも死と性が結びつく。

繭が働く「フラワーショップさえき」の夫人と夫の浮気の物語では、夫がつくるコーヒーが泥の味がするという。過剰な性とセックスレス。性は欲望や所有、不安や嫉妬と結びつく。さらに、木暮荘の女子大生の部屋を穴から覗き続け、存在が目そのものと化す男の話。そして子供を産めない女子大生が友だちの赤ちゃんを預けられる物語。子供を産んで遺伝子を残すことだけが、セックスの意味なのか?

元カノの繭へのストーカー行為が止められない並木は、口にする味から嘘や浮気が見分けられる奇妙なニジコという女性と同居生活を始める。ニジコがセックスを求めていないことで肩の荷が下りる並木。ここでもセックスを介在させない共同生活が始まるも、次第に男女の関係が芽生えてくる。

男と女の関係にはセックスは避けては通れない。死ぬこととセックス、あるいは生きることとセックス。子供を産むこと、恋をすること。木暮荘の寓話のような奇妙な人生の断片や関係を通じて、生きることの悩ましさや愛おしさが感じられる短編連作小説だ。
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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