「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」フレデリック・ワイズマン

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「クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち」「パリ・オペラ座のすべて」などのドキュメンタリーで有名なフレデリック・ワイズマンがロンドンのトラファルガー広場にある世界最高峰の美術館ナショナル・ギャラリーを3カ月にわたって取材した。

フレデリック・ワイズマンとは、刑務内の矯正院を描いた監督第一作『チチカット・フォーリーズ』を1967年に発表以後、44年間にわたりほぼ年に1本のペースで記録映画を製作しつづけているドキュメンタリー映像作家である。ナレーション無し、インタビュー無し、音楽無し、テロップや字幕無しでドキュメンタリーを作る知る人ぞ知るドキュメンタリストだ。ドキュメンタリーにおいてナレーションを入れないということが、どれだけ大変なことか。つまり説明を一切しないということである。客観的な状況説明をせずに取材対象を追いかけることで、ドキュメンタリーを作ってしまうのである。しかもテロップも無しというのだから興味深い。観客は突き離される。同じ手法で最近、日本人のドキュメンタリスト、想田和弘が観察映画という名のもとに「選挙」「精神」「演劇」と同じようにナレーション・字幕などを使わずにドキュメンタリーを撮っている。演劇人の平田オリザに密着した「演劇」を観たのだが、そちらの方は長時間のドキュメンタリーだったけど面白かった。ナレーションなどなくても、取材対象が面白ければドキュメンタリーは成立するのだ。余計な押しつけ的な説明やナレーションがないのがすがすがしいほどだった。

ナレーションとは作り手が客観的な状況説明をするだけでなく、印象を誘導してしまうようなところがある。それはある種の
作り手の傲慢さにも通じる。「このように感じて、観て欲しい」という作り手の意志がナレーションに反映される。状況説明も時間経過もナレーションで語らないということは、取材対象の動きや語りや会話などのやり取りが映画の全てになる。

それでこの「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」だが、取材対象は美術館とそこで働く人々である。いったいどうやってナレーションを使わずにドキュメンタリーにしているんだろうと観る前は興味津々だった。正直に言おう。私にはこのドキュメンタリーを語る資格はない。ずいぶんと眠ってしまったのだ。

取材対象は美術館であり、動くようなアクティブなものではない。人間への密着でも、そこにイベント的な何か時間軸に沿って追いかけるようなストーリーがあるわけでもない。淡々と美術館のスタッフの日常が記録されているだけなのだ。ギャラリーの中で観客に絵画の背景を熱心に説明するキュレーター、あるいは美術館の舞台裏とも言えるようなスタッフ会議の議論が映し出される。「もっと観客のニーズをくみ取るべきだ」というような意見が延々の披歴されるのだ。あるいは美術館がマラソン大会のゴールになることをめぐっての広告的意味合いの議論とか。または、展示の仕方をめぐっての絵画の位置や照明などの準備の様子、絵画の修復現場や科学的検証の様子などなど。テレビクルーの取材現場まで撮影されている。何でもありだ。そこになにか興味を引っ張っていくような展開はない。エピソードの羅列に過ぎないのだ。

音楽で盛り上げるのでもなく、冒頭の掃除機の音のように生活音、リアルな音がベースになっている。ラストの踊りだけが、意図的に仕掛けられたものだ。リアリティはもちろんある。絵画や美術館というものに興味が物凄くある人なら、楽しめるのかもしれない。しかし、私にはこの3時間は辛かった。興味を持続できなかった。

ナレーションなし、インタビューなし、字幕なしでもドキュメンタリーは成立するとは思う。ただそれは、取材対象の人間が魅力的だったり、アクティブだったり、動きのあるものである場合に限るのではないか。まだ美術館の改装とか、ターナー展開催までの準備とか、何か継続的なトピックがあれば興味も持続できるのだろうが、私にはただただ美術館の日常の羅列をダラダラと見せられたようにしか思えなかった。


原題:National Gallery
製作年:2014年
製作国:フランス・アメリカ合作
配給:セテラ・インターナショナル
上映時間:181分
監督:フレデリック・ワイズマン
製作:フレデリック・ワイズマン、ピエール=オリビエ・バルデ
撮影:ジョン・デイビー
編集:フレデリック・ワイズマン
録音:フレデリック・ワイズマン

☆☆☆3
(ナ)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : ドキュメンタリー アート ☆☆☆3

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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