「恐怖分子」エドワード・ヤン

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優れた映画というのは冒頭の数分を観ただけでわかる場合が多い。それだけ、冒頭の数シーンには、映画監督のセンスが表れる。そして、この「恐怖分子」はまさにそういう映画だ。冒頭の数分間を観ただけで、これはただならぬ映画だと思った。

テールランプが光る朝方の街。そこにパトカーのサイレンが鳴り響く。そのサイレンはある男女の部屋の中からも聞こえ、男は外を観る。白いカーテンの揺らめきと朝の空気、やがて遠くで聞こえるピストルの乾いた発砲音。道路に倒れる男。窓から突き出される銃を持った手、犬の鳴き声、逃げ出す男たち、カメラのシャッター音、足を引きづりながら逃げるショートカットの女、雨どいから水の滴る音・・・。音が繋がりながら、違う場所のそれぞれの映像が次々と繋がっていく。

全く関係のない中年の夫婦と若い恋人たちの2組の男女、そしてショートカットの混血の少女が思いもよらぬ形で結びついていくこの映画に描かれる台湾の台北という都市の閉塞感とその不穏な空気の伝染ぶりに驚かされる。誰もいない部屋の窓ガラスが割れる音。部屋の揺らめく白いカーテンの風。あるいは路上に倒れる人。暗室と化した真っ暗な部屋の男女。夕陽の街。そして壁一面の写真が風に揺れる瞬間のなんという美しさ。医師である男が勤める研究棟のある病院のオレンジ色の窓ガラスの幾何学的な風景。夫婦が住む無機質な部屋。扉、窓、部屋がそれぞれ印象的に描かれる。そして小説と写真、いたずら電話というフィクションの力が関係を歪め、不安は伝染し、破滅へと導いていく。

多くの言葉は語られなくても、映像のサスペンスが見事につながっていくのだ。追いつめられた男の銃はどこに向かうのか。血の飛沫とともに私たちはこの美しく非情で鮮烈な映画に打ちのめされる。かつて観たエドワード・ヤンの「牯嶺街少年殺人事件」がもう一度観たい。そして、未見である「エドワード・ヤンの恋愛時代」「カップルズ 」「ヤンヤン 夏の想い出 」が観たい。どこかでエドワード・ヤン監督特集のやってくれないものだろうか。


原題:恐怖分子 The Terrorizers
製作年:1986年
製作国:香港・台湾合作
配給:フルモテルモ、コピアポア・フィルム
日本初公開:1996年
監督:エドワード・ヤン
製作:リン・トンフェイ
脚本:エドワード・ヤン、シャオ・イエ
撮影:チャン・ツァン
美術:ライ・ミンタン
編集:リャオ・チンソン
音楽:ウォン・シャオリャン
キャスト:コラ・ミャオ、リー・リーチュン、チン・スーチェ、クー・パオミン、ワン・アン、マー・シャオチュン、ホアン・チアチン、リウ・ミン


☆☆☆☆☆5
(キ)
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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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