「誰よりも狙われた男」アントン・コービン

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フィリップ・シーモア・ホフマンの遺作となった作品なだけに、観ておきたかった。2014年2月に急逝した存在感のある名優である。スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの同名小説を映画化。ジョン・ル・カレの映画化は『裏切りのサーカス』という作品があってこちらもなかなか良かったが、この映画も見応えのあるスパイ情報戦のサスペンスになっている。派手なアクションなどなく、人間の葛藤ドラマになっているところがいい。

2001年9月11日以降のドイツ、ハンブルグ。あのテロ事件の首謀者もまたハンブルグに潜伏していただけに、イスラム過激派への取締りには過敏だ。フィリップ・シーモア・ホフマンは、ハンブルクの諜報機関でテロ対策チームを率いるボス。それにドイツ諜報界やCIAが絡んでくる。イスラム過激派として国際指名手配されている男が、ハンブルグの港から夜に密入航する場面から始まる。その彼の潜伏を手助けする人権団体の女性弁護士にレイチェル・マクアダムス。指名手配されている男は、チェチェン出身で金持ちのロシア軍人だった父の遺産を、イギリス人銀行家(ウィレム・デフォー)から受け取るべき接触を図る。しかし、彼のチェチェン人の母への思いとロシア人の父への憎しみが明らかになるにつれ、イスラム過激派の男の素朴な実像が見えてくる。

そして、映画の見どころはなんといっても密入国した青年を泳がせつつ、より大きな魚を釣り上げようとするフィリップ・シーモア・ホフマン率いるテロ対策チームと、すぐ彼を捕まえようとするドイツ諜報機関との組織対決、さらにCIAのロビン・ライトも加わり、一人の青年をめぐっての三つ巴の情報組織戦が繰り広げられるところだ。ラストでCIAにしてやられたフィリップ・シーモア・ホフマンのFUCK!と叫ぶところとCIAのロビン・ライトの車の中からの視線の交錯はスリリングだ。情報元との信頼関係を地道に築いてきたフィリップ・シーモア・ホフマンのやり方が、暴力と組織の圧倒的で問答無用のチカラに敗れる必然。それこそが、何度も繰り返されているのこの世の常なのである。

エンドロールで、トム・ウェイツの「Hoist That Rag」の渋い歌声が流れる中、フィリップ・シーモア・ホフマンらいしとてもいい終わり方だったなぁと思いつつ、酒とタバコを持つ彼の仕草のすべてをもう一度反芻していた。


原題:A Most Wanted Man
製作年:2013年
製作国:アメリカ・イギリス・ドイツ合作
配給:プレシディオ
上映時間:122分
監督:アントン・コービン
原作:ジョン・ル・カレ
脚本:アンドリュー・ボーベル
撮影:ブノワ・ドゥローム
美術:ゼバスティアン・クラビンケル
編集:クレア・シンプソン
音楽:ヘルバート・グリューネマイヤー
キャスト:フィリップ・シーモア・ホフマン、レイチェル・マクアダムス、ウィレム・デフォー、ロビン・ライト、グレゴリー・ドブリギン、ホマユン・エルシャディ、ニーナ・ホス、ダニエル・ブリュール

☆☆☆☆4
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ジャンル : 映画

tag : サスペンス ☆☆☆☆4

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Yasuo  K   ( ヒデヨシ)

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