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「大鹿村騒動記」 阪本順治

シカ

原田芳雄が大好きだった。若き日に観てとても衝撃を受けた青春映画『祭りの準備』。四国の田舎から出て行く青年を「バンザイ」と見送った乱暴な与太者。『竜馬暗殺』の竜馬はただただカッコ良かった。松田優作との共演でも話題になったけど、中岡慎太郎役の石橋蓮司との関係も面白かったなぁ。桃井かおりもこの映画では良かったけれど。『赤い鳥逃げた?』は、その桃井かおりが出ている初期の映画で、もうすっかり忘れちゃったけど、原田芳雄の若い頃の映画で、今とっても、もう一度観てみた映画です。初期の原田芳雄も存在感があって、カッコ良かった。

この『大鹿村騒動記』は、そんな原田芳雄のために集まった役者達の映画のような気がする。最初、佐藤浩市がバス運転手で登場し、こんな役でいいの?というほどの端役でビックリ。それもそのはず。錚々たるクセモノ役者たちがメインを固めているのだ。

原田芳雄、岸辺一徳、大楠道代の男2人と1人の女の三角関係がいいのだ。大楠道代との共演は『ツゴイネルワイゼン』を思い出さずにはおれない。駆け落ちした二人が、女がボケたために夫のもとに戻ってくる可笑しさがこの映画の基調だ。原田芳雄と岸辺一徳の奇妙な距離感のある友情がなんとも笑える。男2人と女1人の三角関係の映画といえば、僕はアラン・ドロンとリノ・バンチュラ、ジョアンナ・シムカスのフランス映画『冒険者たち』が凄く大好きで、よく思い出す。一人の女をめぐる二人の男の距離感がいいのだ。この三角関係というのは、男と女の人物造型の基本パターンだと僕は思っている。この映画は、そんな原田芳雄との距離感を本当に楽しんで演じている岸辺一徳がいい。

そして、300年伝わる村歌舞伎がなんとも風情があっていいのだ。その村歌舞伎に夢中になる愛すべき馬鹿な村人たち。お馴染み原田芳雄の盟友・石橋蓮司、小野武彦、小倉一郎、でんでん。ケンカしながらムキになりながら、芝居に夢中になる村人たち。それは、原田芳雄が仲間たちを大事にし、遊びながら酒を酌み交わしたというその姿と重なる。

遊びながら、ケンカしながら、酒で醜態を演じながら、男でも女でもなく、ただそこにいる人として、仲間として一緒にいること、その土地と深く結びつきながら暮らすこと、そんなことの大切さをあらためて感じさせてくれる映画です。

そして、原田芳雄さんが病魔に冒されながらこの映画で演じ、そんな彼と一緒に演じられることを楽しんだであろう役者たち、そして歌舞伎を演じるようにお祭りのように楽しみながら映画を撮ったであろうスタッフのたちを羨ましく思う。どんなことがあっても仲間と一緒にいることで許せるし、救われる。

MM-M93-2683.jpg

原田芳雄さん、いっぱい素敵な映画をありがとう。
僕はずっと、あなたのような男になりたいと思って、スクリーンに映る存在感のあるあなたを見続けてきました。
心からご冥福をお祈りいたします。




製作国: 2011年日本映画
配給: 東映

監督・企画: 阪本順治
脚本: 荒井晴彦、阪本順治
原案: 延江浩
主題歌: 忌野清志郎
キャスト: 原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、松たか子、佐藤浩市、冨浦智嗣、瑛太、石橋蓮司、小野武彦、小倉一郎、でんでん、加藤虎ノ介、三國連太郎

☆☆☆☆4

(オ)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 人生

「東京公園」青山真治

tokyo.jpg

不在の中にこそ確かな存在がそこにあり、小西真奈美に見つめ返されるその視線にドキドキしてしまった。

視線をめぐる物語だ。見つめること、見つめ返されること。不在=死が空間を支配し、その不在の空間をカメラは撮り続ける。その不在の空間にこそ、色濃く存在が浮き彫りにされる。

すべてがいい人ばかり出てくる調和的原作を青山真治風に変えたもっとも大きなところは、ヒロ(染谷将太)を死なせたことである。「ノルウェイの森」的な死=不在の友をめぐる三角関係。死んだ友人とその彼女と僕との関係。最初はヒロがそこにいるのに、別の場所に突然現れたりして、存在が不確かで、観客に奇妙な印象を与える。そして光司(三浦春馬)が家を出ていく時の不在の廊下。見送るヒロもいないし、光の変化だけでドアの開け閉めが表現される。これは小津安二郎的な空間の切り取り方だ。不在の廊下。もちろん、小津的な正面ショットの切り返しや、バーのカウンターで酒を飲む二人の動作を同時にさせたりする場面もあり、小津ファンには楽しめる。

幽霊であるヒロの存在は、元カノである富永(榮倉奈々)にとっては永遠の不在として存在し続ける。それは光司(三浦春馬)にとっては、カメラマンである母の死=不在が心の中に存在し続けているのと同じだ。また光司に妻の尾行を依頼する初島(高橋洋)にとっては妻(井川遥)が不在であり、妻である井川遥にとっても、夫の初島が不在だ。ゲイであるバーのマスター(宇梶剛士)は、妻の不在を夢の中までも抱え続ける。そして何よりも姉の美咲(小西真奈美)にとっては、する弟の光司を意識の外に無理やり押し出し、不在にさせて苦しんでいるのだ。存在と不在。

そこにいるのに見ることが出来ない相手。見ないようにしている相手。見えなくなってしまう相手。見えたはずなのにいなくなってしまった空間。視線は不在の空間をさまようばかりなのだ。それを光司はカメラで撮り続け、青山真治監督もまたカメラで不在の空間を撮り続けた。確かに存在したはずの空間を情をこめて。撮ることで、何かを忘れないために。大切なものを写し撮るために。映画とは、不在を撮り続けることなのかもしれない。

そうなのだ。美咲(小西真奈美)が先ほどまで弟と過ごしたソファの不在の空間をおし気に見つめるように、人はいつまでも不在の空間を見つめ続ける。確かにそこにいたはずのする人の痕跡を。

だからこそ、視線が交錯する小西真奈美の見つめ返す視線にドキドキしてしまうのだ。視線は不在の空間を彷徨うのではなく、強い思いで見つめ返されるのだ。弟の光司だけでなく、観客さえもがその視線にドギマギする。このシーンの小西真奈美は素晴らしい。カメラで撮り続ける対象の井川遥にレンズ越しに見つめ返されるより、はるかに強い思いがそこにあるのだ。カメラのレンズを通して、光司は同じように見つめ返されるのだ。撮ることで見つめ返される動作の反復。他者との出会い。あの初めて姉と弟が公園で出会い、視線を交わし合った時のように、再び、姉と弟はしっかりと視線を交わし合い、抱えきれぬこれまでの思いを確かめ合う。このシーンは、とても感動的だ。

そして、ソファに俯いて泣いていた美咲(小西真奈美)の仕草は、富永(榮倉奈々)によって繰返される。ここにも動作の反復がある。「私には光司しかいないのよ。」と光司の部屋に引っ越してきて泣き崩れる富永。俯いて泣く姿は、美咲と同じだ。そして、今度は静かに光司は富永の背中に手をかける。

ラスト、光司と初島夫婦が、家具屋でバッタリ再会し、視線を交わし合うことで視線の物語は終わりを告げる。つまり、この映画の物語とは、視線が相手を見失い、不在の空間を彷徨うばかりの者たちが、最後は確かに視線を交わし合うまでのお話なのだ。他者と出会い、そこから何かが変わり、何かが終わり、何かが始まる。

初島を原作にあるような礼儀正しい紳士ではなく、子供じみた、みっともない大人にしたのも青山風アレンジだ。最後に初島が酒を飲んでいる公園の木の形が母性的で美しい。公園そのものが、人々をやさしく包んでいるように、われわれの愚かな人間たちを、風や光や木や海などの自然が、やさしく見守ってくれているのだということを思い出させてくれる映画だ。それは、死んだヒロの涙が落ちてくるように、死んだ者たちの視線でもあるのかもしれない。

原作:小路幸也「東京公園」レビュー

製作年: 2010年
製作国: 日本
日本公開: 2011年6月18日
上映時間: 1時間59分
配給: ショウゲート

監督・脚本・音楽: 青山真治
原作: 小路幸也
脚本: 内田雅章 / 合田典彦
音楽: 山田勲生
撮影: 月永雄太
キャスト:三浦春馬、榮倉奈々、小西真奈美、井川遥、高橋洋、染谷将太、長野里美、小林隆、宇梶剛士


☆☆☆☆☆5
(ト)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : ☆☆☆☆☆5

「奇跡」 是枝裕和

kiseki.jpg

ややJR九州のCMのような感じがする。この映画を1分くらいのCMにまとめたら、とてもいい感じになるような気がする。そういう意味では、あの名作『誰も知らない』には遠く及ばない。それでも随所に是枝監督のやさしい眼差しが溢れていて、子供たちの生き生きと走る姿が素晴らしい。家族の日常のひとコマという意味では『歩いても 歩いても』に近い作品だ。

桜島の火山灰が降る町、鹿児島に両親が別々に暮らすために引っ越してきた兄(前田航基)は「意味がわかんねぇ」と不満を繰り返す。冒頭、部屋の畳を汚す火山灰を律義に雑巾で拭いている。学校へ行く坂道も「意味わかんねぇ」と文句が続く。そんな兄が、「奇跡」の旅を終えて帰ってきた時、桜島に「ただいま」と挨拶する。行くときも「行ってきます」と言っていた。「意味がわかんねぇ」不満(両親の不和)を受け入れて、前へと歩き出した。

火山灰が降り積もりつつも、そんな厄介な山とともに暮らす生活こそが、我々の暮らしなのだと思う。自然の力=危険と隣り合わせで暮らしていることを、われわれは忘れてしまいがちだ。何が起きるかわからない自然とともに我々は暮らしているのだ。そのことをつい忘れてしまう。鹿児島では、いつも見上げるとそこに煙モクモクの桜島がある。そういう場所では、自然への畏敬の念がいつもでも町の人々の暮らしとともにある。だからこそ「行ってきます」「ただいま」と挨拶したくなるのだ。ある意味、厄災にあわずに生きていることだけでも、われわれは「奇跡」なのかもしれない。

新幹線がすれ違う時、火山噴火のアニメのイメージとともにこれまでの日常の細部のイメージがカットバックされる。この日常の細部にこそ、大切なものがあるのだ。その細部を大切に生きることこそ、子供達にとって必要なことなのだ。ポテトチップの残りかすや自販機の下の10円玉、コスモスの種などなど。

そして子供達はやたらと走る。その走る子供達をカメラは追いかけることで、映画の運動性、躍動感が出ている。さらに列車の窓から見える動く風景が、子供たちの未来のワクワク感・冒険を演出している。

奇跡の瞬間を求めてやたらと走る続けたあの頃を、僕らは思い出すのかもしれない。大いなる自然に抱かれて、細部を大切に握りしめて、何かを求めて走り続けたあの頃を。そんな懐かしさがこみ上げてくる映画だ。


製作国:2011年日本映画
配給:ギャガ
監督・脚本・編集:是枝裕和
撮影:山崎裕
キャスト:前田航基、前田旺志郎、林凌雅、永吉星之介、内田伽羅、橋本環奈、磯邊蓮登、オダギリジョー、夏川結衣、阿部寛、長澤まさみ、原田芳雄、大塚寧々、樹木希林、橋爪功

☆☆☆☆4
(キ)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 家族

「マイ・バック・ページ」山下敦弘

my back

1976年生まれの山下敦弘監督が、あの激動の時代1969年~1972年の事件までをよく描いたなぁと思う。元・朝日新聞の週刊誌記者だった川本三郎が巻き込まれた事件の自伝的物語を映画化した。

1971年8月21日の夜に実際に起こった「朝霞自衛官殺害事件」。東京と埼玉にまたがる陸上自衛隊朝霞駐屯地で、当時歩哨任務についていた一場哲雄陸士長が「赤衛軍」と名乗る新左翼グループに殺害された。この事件では、当時朝日ジャーナルの記者だった川本三郎が、犯人から「警衛」の腕章を受け取り燃やしていたことや、週刊プレイボーイの記者が犯人達に逃走資金を渡していたことなども判明し、両名は「犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪」で逮捕された。

あの当時、ジャーナリストと活動家はとても近い距離だった。時代は世界変革の大きなうねりの中にあった。朝日ジャーナルも週刊プレイボーイの記者でさえ、社会を変えられると思い、活動家にシンパシーを抱いていた。

1968年、TBS成田事件というのもあった。成田空港建設反対集会の取材中、TBSドキュメンタリー取材班がマイクロバスに反対派の農婦7人と集会に使うプラカードなどを乗せて運んだという事件だ。政府・自民党からTBSは非難され、報道職員は処分された。これはTBS闘争に発展し、闘争渦中の人であった萩元晴彦、村木良彦を含めた十数名は、TBSを退社しテレビマンユニオンという会社を創立した。テレビ史においても大きな事件だった。萩元晴彦、村木良彦、今野勉著の『お前はただの現在にすぎない』という本に詳しく書かれている。かつて僕もテレビマンになる前に、この本を夢中になった読んだなぁ。

そんな活動家とジャーナリストの微妙な関係が、この映画でも描かれている。警察に犯人を引き渡すか、取材源を秘匿するかなどの事件と警察の関係、社会部と週刊誌の記者達の溝も描かれているあたりも面白い。権力を監視しチェックするマスコミの役割と、権力の側にしかいられないマスコミの限界。今回の原発報道でもその存在意義が問われているが、ジャーナリズムの問題点は、同じマスコミに所属している僕にとってもとても興味深い。

1970年、僕はまだ10歳だった。安田講堂の陥落も遠い子供の頃の記憶だ。ただ浅間山荘事件など内ゲバや連合赤軍事件は、生々しく印象に残っている。時代は変わり、社会はあの当時のショックをいつまでの引きずっていた。

僕が大学生になった頃、もう大学は静かだった。学生たちはナンパして遊ぶことで忙しかった。社会を変えようと考えているような学生はほとんどいなかった。それでも僕は、あの時代のことが気になって、いろんな本を読んだし、資料を読み漁った。黒いヘルメットをかぶってデモに行ってみたりもしてみた。しかし、社会は揺ぎ無いほど強固で、どうしようもなく、のっぺりとしていた。変えようと思ってもビクともしないような感じだった。あの頃のモヤモヤとした感じ、鬱屈と不満と苛立ちと無力感をこの映画を観て思い出していた。

松山ケンイチ演じる活動家・梅山は、とてもインチキな中途半端な男だ。革命家を夢見る幼稚なごっこ遊び。そう、当時の内ゲバを繰り返す学生たちも革命ごっこをしていたのかもしれない。革命家気取りの何もない男・梅山のような男がいっぱいいたような気もする。そして、京大全共闘議長の前園(山内圭哉)のような男も。そんな梅山のようなインチキな男でも、主人公の記者、沢田(妻夫木聡)は、CCRの「雨を見たかい(Have You Ever Seen The Rain)」を一緒に歌ったりして意気投合する。

事件後に「なんで俺はあんな男を信じたんだろう」と述懐する場面で、「信じたかっただけかもしれない」とつぶやく。彼もまた、何者でもない自分に苛立ち、焦っていた。スクープを手に入れたいという気持ちもあった。梅山は、「記事さえ出れば、俺たちは本物になれるんだ」と沢田に言う。同じ夢を見る二人。何者でもない焦りと苛立ちに、僕はあの頃を思い出して共感する。

ダスティン・ホフマンが『真夜中のカーボーイ』のなかで、最後に「I am scared.」って言いながら泣く場面のことが語られる。週刊誌の表紙モデルの女の子(忽那汐里)と『ファイブ・イージー・ピーセズ』を観たあとで、「ジャック・ニコルソンの泣き顔が良かった。私、ちゃんと泣ける男の人が好き」と沢田は言われる。アメリカン・ニューシネマでは、かっこいい強いヒーローではなく、等身大の情けない男が登場した。『真夜中のカーボーイ』のダスティン・ホフマンは僕にとっても衝撃的なヒーローだった。

この映画は、ラストシーンがとてもいい。沢田が居酒屋で泣くシーンだ。彼にとっての記者時代の原点は、貧乏放浪記を書いたあの頃なのだ。それは裸でつき合った人との出会いだった。ある意味この映画は、沢田が「泣ける男」になるまでの物語とも言える。意気がって、背伸びして、何かを掴もうとしてつかめなかった苦い悔恨。誰もいない会社で机の整理をしながら、モデルの女の子(忽那汐里)と話をする場面もいい。青春にはいつだって苦い悔恨がつきものなのだ。それは何かを掴もうとあがいた者でなければ、感じられない苦い味だ。そんな苦い涙がとてもいとおしく思い出される映画だと思う。

妻夫木君が、川本三郎をとても意識して演じていた。なんだかあんな青年だったんだろうなぁと思った。松山ケンイチの中途半端さ加減もとても存在感があった。脇役も含めてキャスティングがとても素晴らしく、山下監督の演出力はさすがでした。


製作国:2011年日本映画
配給:アスミック・エース
監督:山下敦弘
原作:川本三郎
脚本:向井康介
撮影:近藤龍人
音楽:ミト、きだしゅんすけ
美術:安宅紀史
主題歌:真心ブラザーズ、奥田民生
キャスト: 妻夫木聡、松山ケンイチ、忽那汐里、石橋杏奈、韓英恵、中村蒼、長塚圭史、山内圭哉、古舘寛治、あがた森魚、三浦友和

☆☆☆☆4
(マ)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 青春

「まほろ駅前多田便利軒」大森立嗣

まほろ

三浦しをんの原作は読んでいた。だから、この物語の映像化はイメージしやすかった。たぶんキャスティングさえ失敗しなければ、面白い映画になるだろうと思っていた。「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」は見逃していたが評判のいい映画だった。大森立嗣監督はちゃんと二人の役者に芝居をさせて、じっくりと撮っていた。小手先の映像技術など使わずに、ちゃんとじっくりと画面の中で、瑛太と松田龍平を息づかせていた。

「誰かに必要とされるってことは、誰かの希望になるってことでしょ」

何を考えているんだかよくわからない男・行天春彦(松田龍平)が急にまともなことを言う。この物語はこの行天春彦の破天荒でとりとめのない風来坊の魅力に尽きる。それを松田龍平は彼なりに不思議なキャラクターで演じていた。特に歩き方がなんだかおかしい。手を前後にフラフラさせて、幽霊のようにひょうひょうと階段を上り降りして、キレたストーカー野郎(柄本佑)を追いかけさせる。なんだか奇妙な立ち居振る舞いである。ドカッと地に足をつけるのではない歩き方とでも言おうか・・・。
それに対して瑛太はじっくりと松田龍平の不思議な芝居を受け止めている。家族がいながらも家族からはなれて一人で生きている男と、家族を失いながらその哀しみから抜けられない男。魅力ある二人の役者が便利屋をやるシチュエーションだけで、ほとんど成功しているようなものだ。

親に無視され続ける子供に多田(瑛太)は自分に言い聞かせるように言う。

「おまえの親が、おまえの望む形で愛してくれることはないと思う。だけど自分には与えられなかったものを、新しく誰かに与えることはできるんだ」

人は誰かの希望にもなれるし、不幸のタネにもなれる。疎ましくもあり、愛することも出来る。人は人との関係の中でしか生きられないのだ。

三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」レビュー


製作国:2011年日本映画
配給:アスミック・エース
監督・脚本:大森立嗣
プロデューサー:孫家邦
原作:三浦しをん
音楽:岸田繁
キャスト:瑛太、松田龍平、片岡礼子、鈴木杏、本上まなみ、柄本佑、横山幸汰、梅沢昌代、大森南朋、松尾スズキ、麿赤兒、高良健吾、岸部一徳

☆☆☆☆4
(マ)

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 人生

プロフィール

ヒデヨシ

Author:ヒデヨシ
札幌でテレビの仕事をしている
オヤジです。
映画にまつわる雑文です。
2006年からの映画レビュー。
それから、本の感想を少し。


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映画ベスト10 2009~2017年
2018年ベスト10
<洋画>
    「スリー・ビルボード」
    「正しい日、間違えた日」(2015)
    「希望のかなた」
    「顔たち、ところどころ」
    「ラブレス」

<日本映画>
    「万引き家族」
    「寝ても覚めても」
    「きみの鳥はうたえる」
    「モリがいる場所」
    「カメラを止めるな」


2017年ベスト10
<洋画>
    「パターソン」
    「動くな!死ね!甦れ!」(1989)
    「誰のせいでもない」
    「ありがとう、トニー・エルドマン」
    「オン・ザ・ミルキー・ロード」
    「パーソナル・ショッパー」
    「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
    「マリアンヌ」
    「婚約者の友人」
    「セールスマン」

<日本映画>
    「散歩する侵略者
/予兆 散歩する侵略者」
    「三度目の殺人」
    「南瓜とマヨネーズ」
    「光(大森立嗣)」
    「息の跡」
    次点「彼女がその名を知らない鳥たち」
    次点「幼な子われらに生まれ」
    次点「バンコクナイツ」


2016年ベスト10
<洋画>
    ダゲレオタイプの女
    マイ・ファニー・レディ
    キャロル
    シング・ストリート 未来へのうた
    リザとキツネと恋する死者たち
    グッバイ・サマー
    サウルの息子
    マジカル・ガール
    ブリッジ・オブ・スパイ
    手紙は憶えている
<日本映画>
    淵に立つ
    クリーピー 偽りの隣人
    海よりもまだ深く
    ふきげんな過去
    SCOOP!
    永い言い訳
    オーバー・フェンス
    ディストラクション・ベイビーズ
    葛城事件
    湯を沸かすほどに熱い愛
    次点この世界の片隅に


2015年ベスト10
<洋画>
    やさしい女
    さよなら人類
    さらば、愛の言葉よ
    毛皮にヴィーナス
    雪の轍
    愛して飲んで歌って
    サンドラの週末
    サイの季節
    インヒアレント・ヴァイス
    ソニはご機嫌ななめ

<日本映画>
    海街dairy
    岸辺の旅
    FOUJITA
    百円の恋
    この国の空


2014年ベスト10
<洋画>
    エレニの帰郷
    グランド・ブタペスト・ホテル
    罪の手ざわり
    ウルフ・オブ・ウォールストリート
    ジャージー・ボーイズ
    インサイド・ルーウィン・デイヴィス
    6才のボクが、大人になるまで。
    フランシス・ハ
    ウォールフラワー
    ある過去の行方

    <日本映画>
    そこのみにて光輝く
    ニシノユキヒコの恋と冒険
    紙の月
    Sventh Code
    私の男


      2013年映画ベスト5
<洋画>
    1、「愛、アムール」
    2、「ホーリー・モーターズ」
    3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
    4、「いとしきエブリデイ」
    5、「ムーンライズ・キングダム」
    ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

    <日本映画>
    1、「共喰い」
    2、「さよなら渓谷」
    3、「恋の渦」
    4、「リアル 完全なる首長竜の日」
    5、「Playback」(2012年)


    2012年映画ベスト10
<洋画>
    2、「少年と自転車」
    3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
    4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
    5、「きっと ここが帰る場所」
    6、「ドライヴ」
    7、「風にそよぐ草」
    8、「恋のロンドン狂騒曲」
    9、「おとなのけんか」
    10、「別離」
    次点 「裏切りのサーカス」
番外
    「永遠の僕たち」
    「J・エドガー」
    「家族の庭」

    3、「演劇1&2」
    4、「夢売るふたり」
    5、「アウトレイジビヨンド」
    番外 「ヒミズ」


2011年映画ベスト10
    3,「ブルーバレンタイン」
    4,「愛する人」
    5,「クリスマス・ストーリー」
    6,「トゥルー・グリット」
    7,「SOMEWHERE」
    8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
    9,「エリックを探して」
    10,「シリアスマン」
    次点,「エッセンシャル・キリング」

    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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